ちょっと残念な話を聞きました。
竹富島でかなり以前からやっていた老舗の民宿が、今後は夕食の提供をしないことになったそうです。
以前は、和風旅館はもちろん、ペンション、民宿といった個人宿・小規模宿でも朝・夕2食付きというスタイルがほとんどでした。
それが、今では食事を出す小規模宿がどんどん減っているのです。
沖縄の多くの民宿では、お客さんが一堂に会して夕食をとりつつ、やがて酒が入って、オーナーも参戦してそのまま宴席に突入するといった、いわゆる「ゆんたく」が当たり前のように行われていました
それを楽しみにしている客も少なくなく、もちろん、自分もその一人です。
ゆんたくとは、島言葉でおしゃべりといった意味ですが、沖縄旅行者の言うゆんたくとは、民宿の夕食時の宴会です。
ゆんたくの楽しさを知ったのは、石垣島にあったペンションぱいらんどでした。
初めて泊まったのは、もう四半世紀も前になりますが、そこで多くの沖縄好きと出会い、知り合いになりました。
こういう雰囲気が嫌いな人も当然いたと思います。もちろん強制参加ではありませんが、知る限りは、酒を飲まない人も含めてほとんどのお客さんがゆんたくに参加していました。
皆が集まって楽しそうに盛り上がっていれば、何となく自分も加わりたくなります。沖縄が好きという共通の趣味もありますから。
ペンションですから宿代は安いですが、そこにはプライスレスお楽しみがありました。
しかし、10年くらい前から、民宿、ペンションなどでも夕食を出さない所が徐々に増えてきたのです。
その理由の一つは、外国人旅行者の増加です。文化の違いだろうと思いますが、彼らは、夜は外食を好みます。
慶良間諸島の座間味島では、古座間味ビーチがミシュランに載ったことで、ある時期から外国人がドッと押し寄せるようになりました。
元々大きなホテルなどなかった座間味島ですが、そのことがきっかけで、夕食付きの宿が一気に減少してしまいました。
もう一つの理由は、最近良く耳にする聞く高齢化と人手不足です。
民宿でも、部屋数が5~6室を超えてくると家族だけで経営するのは困難で、少なくとも繁忙期にはヘルパーさんが必要ですが、それがなかなか集まらない。
そのうち、おじぃ、おばぁが病気になったなどという理由で、宿としてはコスパの悪い食事提供をカットせざるを得なくなってゆくのです。
夕食を各自が別々に食べに行くことになると、ゆんたくはなかなか成立しません。
ゆんたくの問題だけではありません。
外食だと、好きな時間に好きなものが食べられるというメリットもあります。
しかし、日中遊んだ後で、わざわざ外出して夕食を食べに行かなければならないのは億劫な時もあります。
最近は、食堂や居酒屋も混んでいることが多く、すんなり入れるとは限りません。
宿の近くにいい店があるとは限らず、総じてコスパも悪くなります。場所によっては駐車場の心配もしなければないません。
宮古島にも石垣島にも、リゾートホテルが次々とオープンしていますが、それに反比例するかのように、朝・夕2食付きの個人宿が減っています。
金さえ出せばゴージャスなホテルに泊まって、これまたゴージャスなホテルのレストランで、一流のシェフの腕によるディナーに舌鼓を打つことができます。
でも金がない、いや金があったとしても、それで満足な人だけではないと思うのです。
実は、そのことに凄い危機感のようなものを感じています。大袈裟な言い方をすると、海の環境悪化で珊瑚が減って行くのと同じくらいの衝撃なのです。
何か対策は打てないものでしょうか。
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