2022年8月1日月曜日

嵐の前の静けさ?宮古都市計画とトゥリバー地区

 


 美しいビーチですが、これは、埋め立て地に砂を入れて造った人口ビーチです。そして、背後に建つ黒っぽい建物は、建築中の巨大ホテルです。


 ヒルトン沖縄宮古島リゾート。いよいよ来年春の開業予定です。

 アメリカのHilton Hotels & Resortsが展開するホテルで、宮古島初上陸となります。
 

 地上8階、床面積:27,983㎡、総客室数329室の巨大ホテルで、宮古バブルの中の頂点ともいえるホテルでしょう。



 

 ホテルが出来るのは、宮古島の西側、伊良部大橋の付け根の北側辺り。トゥリバー地区という埋立地です。

 これは、本家バブルの時代、旧平良市が計画・着工したもので、総面積32ヘクタール(東京ドーム7個分くらい?)という壮大な計画でした。
 

 公園、ホテル、マリーナなどを整備する計画の下、全体の40%ほどの土地を、ホテル用地などとして41億円で民間企業に売却し、事業費の一部に当てる予定でした。 

 売れずに値引きするという話があったのが2006年。その当時で累積赤字は数十億とも報じられていました。

 トゥリバーは、長らく活用されることなく、一部が辛うじてが公園と人工ビーチとして整備されたものの、利用者は、ほぼ島の人だけという状況が続いてきました。


 その後、苦節何十年?

 伊良部大橋の完成と下地島空港の利活用でバブルを迎えた宮古島にあって、ついにヒルトンのトゥリバー進出が決まり、これに併せて、マリーナを整備し、プレジャーボートを受け入れる計画です。
 




 これは、沖縄県が平成29年(2017年)に策定した、宮古都市計画「区域の整備、開発及び保全方針」 の中に「世界へ開くリゾート都市 宮古島コースタルリゾートヒララ(仮称)」として位置付けられています。

 「宮古島コースタルリゾートヒララ」で吹き出しそうになった人もいると思いますが、それは取り敢えず措いてください。笑


(宮古都市計画(平成29年 沖縄県)より)


 読みにくいと思うので再掲すると、

「③ 世界へ開くリゾート都市 
 広域交通機能の向上が図られた平良港は、アジアからの国際クルーズ船就航など、国際交流拠点とし て重要な役割を果たしており、とりわけ観光振興地域に指定されているトゥリバー地域は、市街地との 回遊性・連続性が向上した身近な海浜リゾート地として整備が進んでいます。 」

 ということだそうです。

 「交流拠点」「回遊性」「連続性」は、この手の計画で役所が好んで使う表現ですが、通訳すると、「集客できる」「行ったり来たりする」「近い」といった意味です。


 トゥリバーは、中心市街地に近いから、泊まり客がホテルから市街地の飲食店まで来てくれることが期待できるという意味でしょう。
 トゥリバーが、下里や西里に近いとは思えませんが、遠くはない、タクシーを使えばすぐだ、という理屈でしょうね。


 
 近年、沖縄各地で新たにホテル事業に参入してきた業者の中には、不動産会社とか住宅会社とか、畑違いの業種も少なくありませんでした。

 その点今回は、世界で600軒近くのホテルを経営するヒルトンが、満を持して乗り出してきたのは、採算性の見通しが十分あったからでしょう。

 それでも、ホテル開業ラッシュの中、JTAの飛行機3機分を軽く超える、600人以上を収容する巨大ホテルの開業はかなり衝撃的ですし、風通しのよさそうなトゥリバーで、台風対策は大丈夫なのかと、余計な心配もしたくなります。






 この巨大ホテルがフル稼働するとなると、タクシーもレンタカーも飲食店も足りません。しばらくは、宮古島に行っても色々大変かも知れません。

 それで、タクシーが増え、レンタカーが増車され、飲食店が増えた頃、想定外のことが起きてあたふたする・・・って、つい最近何処かで見たような。



 トゥリバーが、何十年かの時を経て、当時関係者が思い描いた姿に近づいています。


 改めて、この計画のために巨額の税金が投じられていること、そしてその大部分は国費、つまり宮古島市民だけでなく、国民の税金であることを踏まえ、納税者として、計画が一部の人達のためのものではなく、宮古島の人全体の福利(幸福と利益)に貢献したのか、監視する必要があると思います。 






 今は、嵐の前の静けさかも知れません。

 人工でも、意外と素敵なトゥリバーの海や公園ですが、その姿を今年のうちに紹介しておこうと思います。



 去年の10月、トゥリバーの遊歩道の真ん中の木陰で涼んでいたにゃんこ。こんな光景に来年以降も出会えるでしょうか。




 宮古都市計画(沖縄県)はこちら


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2022年7月28日木曜日

黒島が秘境の観光地になりつつある Ⅱ




 観光客が減って、どんどん不便になっていく黒島。


 それにしても、何でこうなっちゃったのでしょうか。何か原因があるのでしょうか。でも、特に思い当たる節はありません。

 しかも、周辺の他の島は、コロナの影響を除けば、観光客が大幅に増加しています。

 そこで、改めて、観光地としての黒島の現状をチェックしてみたいと思います。




 黒島と言えば、仲本海岸です。

 八重山でも屈指のシュノーケリングポイントと知られ、石垣島からの日帰り客も多くやって来ていました。
 

 珊瑚も熱帯魚も、それなりに居て、知る限りでは、ここ数年状況は変わっていないと感じています。

 むしろ、波照間島のニシ浜の方が、数年前の白化で壊滅的な打撃を受けています。


 少し前から、遊泳中の事故が問題となり、一時は、入り口付近で、遊泳者に直接声かけがなされたり、ライフジャケットの無料貸し出しが行われていたこともありましたが、今では、入り口のプレハブ小屋に人が居ることもありません。

 
 仲本海岸と、黒島不人気は関係ないようです。



 

 その他のビーチや観光名所、と言っても、黒島では元々、仲本海岸のほかには、せいぜい伊古桟橋と西の浜くらいしか、見るべきポイントがありません。

 伊古桟橋は、崩落部分が修復されたり、入り口付近に四阿が出来たりと、むしろ、改善されています。

 西の浜も以前と変わらず美しさは健在です。その他、黒島灯台も変わらずです。
 


 貸し自転車屋は港近くに2軒あります。以前はなかった、レンタカーまで登場しました。ダイビングショップも3軒(数え方によっては4軒)営業しています。


 黒島ならではの団体ツアーもあります。 

 黒島研究所を見学し、最後にウミガメの放流に立ち会うというものです。2回ほど見かけたことがあるので、定期的にやっているのでしょう。



 一般的に観光地が衰退するパターンは、テーマパークが廃業した、ブームが去った、施設が老朽化した、などが挙げられますが、どれも黒島には関係なさそうな話です。

 その他、大きな事件・事故、トラブルといった話も聞きません。


 結局黒島の場合、観光客が減った原因はよく分かりません。

 
(観光客が少なすぎて牛に占領された道路!?)




 確かに、誰もいない黒島も魅力的です。

 俗っぽい石垣島を離れたら、わずか30分で、観光客のほとんどいない島に着き、特に何をするでもなく、ゆったり時間を過ごす。

 そんな沖縄旅行もいいと思います。



 しかし、これ以上秘境化が進んでしまうと、食事処がなくなり、昼ご飯は、石垣島から弁当などを買って持ち込むか、島内の売店でパンかカップヌードルを買って済ませる、何てことになりかねません。

 行きつけの民宿が廃業してしまっても困ります。

 船が更に減って、朝夕の2往復になってしまったら、石垣島に前泊・後泊しなければ黒島には行けないことになってしまうかも知れません。


 静かでのんびり、と引き替えに、多少の不便は厭わないつもりでも、これ以上の秘境化はちょっとどうなんでしょうか。

 不便さに歯止めがかかるように、皆さん、黒島でのんびり旅行体験をしてみませんか。




 「のんびり」というのも抽象的な言い方ですが、例えば、目的地を定めず、取り敢えず、自転車で島をグルッと回ってみる。

 伊古桟橋や、西の浜では美しい海を眺めながらボーッと過ごす。

 スコールが来そうになったら、一旦宿に戻る。

 スコールが上がったら、虹を探しに再び外に出てみる。
 
 
 暑かったら、午前とか午後とか(干潮時間帯)に仲本海岸に行ってみる。本格的にシュノーケリングをしてもよし、そこまでするのが面倒だったら、取り敢えず、短パンで浅瀬を歩いて、ルリスズメダイを上から眺める。


 昼間からオリオンビールをいっちゃってもいいし、汗をかいたら、民宿に戻ってシャワーを浴びて昼寝とか。

 夜は、泡盛を飲みながら、数少ないお客さんや宿の人と話が弾む。一歩部屋から出れば、満天の星空。

 そんな、「黒島の旅」をご一緒にいかがですか。





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2022年7月23日土曜日

黒島が秘境の観光地になりつつある Ⅰ

 

 ここ数年、観光客が減って、どんどん不便になっている島があります。
 八重山諸島の黒島です。





 宮古・八重山諸島に通い始めて20年余。

 宮古島も石垣島も、周辺の離島も、観光客が増え、港が立派になり、駐車場が各地で整備され、ホテルや飲食店も増え、便利になった一方、よく言えば賑やかに、悪く言えば俗っぽくなってきました。

 黒島は、そうした流れに逆行するかのように、秘境の観光地へと突き進んでいるようです。

 数年前から、徐々にその傾向が見られたのですが、今年の夏は、いよいよ来ちゃった!?みたいな思いをお伝えします。
 


人が行かなくなった

 入域観光客数をみていきます。竹富町が公表している数字です。

竹富島
 ピークは平成25年の519,641人
 コロナ前の令和元年は、511,757人 昨年は156,435人

小浜島 
 ピークは平成28年の190,264人
 コロナ前の令和元年は153,373人 昨年は75,545人

波照間島
 ピークは平成29年の40,963人
 コロナ前の令和元年は38,212人 昨年は24,226人


それに対して黒島は、
 ピークが平成20年の42,072人
 コロナ前の令和元年は23,655人 昨年は11,562人


となっています。


 どこの島も、コロナ前までは順調に観光客が増えていました。この傾向は、石垣島、宮古島も同じです。

 そんな中で、黒島だけは、10年以上前にピークを迎え、以後観光客は減っています。
 令和元年(2019年)の数字では、竹富島の20分の1以下、波照間島にも大差をつけられています。




船の便数が減った

 コロナ前は、安栄観光+八重山観光フェリーの共同運航便が、1日5~6往復、それに加えてドリーム観光が2往復運航されていました。

 現在は、安栄観光と八重山観光フェリーが各3往復の計6往復。でも、両社同じような時刻に運航しているので、利用者からすれば、朝・昼・夕方の1日3往復と変わりません。

 
 これは、飛行機との連動でアクセスが不便なだけではなく、石垣島からの日帰り観光が、もの凄くしづらくなっています。


 当初予定では、7月20日から安栄観光が、10時台に1往復増便するはずでしたが、あちらさんの事情により中止となりました。




 (安栄観光の事情については、こちらから。)



食堂がほとんどお休み

 黒島港の待合室に掲示してある、お食事処の案内。
 島で昼ご飯を食べられるのは、ハートらんど、Cafe ICONOMA、テイクアウト専門のホリエSandの僅か3箇所しかありません。



 しかも、7月1日現在、Cafe ICONOMAも休業中。




 かつてあった、味処はとみ・Palmtree・牛汁の店南来(なんくる)・よねおじさんの家は、もう完全に閉店したようです。

 パーラーあーちゃんも、人手不足が理由とのことなので、ちょっと苦しいかも。

 かろうじて再開の可能性があるのは、うんどうやとCafe ICONOMA位でしょうか。


 約20年前、初めて黒島に行ったとき、お昼ご飯が食べられるのは、当時あったホテルのレストランのみだったのですが、20年経ってほぼ同じ状態に戻ってしまいました。



 ちなみに現在、黒島の宿は、民宿6軒と一棟貸しの古民家1軒だけです。



 7月1日現在、島唯一の食堂、Cafeハートらんど。港のすぐそばです。



 店内に10席ほどと、テラスに数席の小さな店ですが、観光客も、工事などで来島している人もここに殺到します。

 特に、ここで食事をして13時台の船に乗ろうとする人で、昼時は混雑します。

 店主によれば、時間との闘いだそうで、船の時間を聞き、船に乗らない人にはお願いして、船に乗る人を優先することもしばしばだとか。



 ハートらんどのメニューです。そばやカレーなどのほか、スイーツやドリンクも充実しています。



 店主のイチ押し「アイスクリームの天ぷら」800円也。

 天ぷらと言うよりは、アイスクリームのホットサンドみたい。
 結構ボリュームがあり、恐らく、八重山そばと同じくらいのカロリーが・・・ 笑




 行く人が減るから不便になる。不便になったから人が行かない。

 そういう循環だと思うのですが、何が理由でこうなったのか、よく分かりません。特に、近くの他の島は観光客が増えているだけに謎です。





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