2026年8月25日火曜日

訪問税のフォアランナー 竹富島の入島料の現在地

 

 難航している竹富町の訪問税ですが、それとは別に、竹富島では、2019年から島に行く人に入島料の支払いを求めています。

 訪問税は、全島が対象で税金なので強制徴収、入島料は、竹富島だけのオリジナルで支払いは任意です。

 当ブログは、訪問税には反対していますが、逆に入島料の趣旨に賛同し、かつての記事では「僭越ながら、当ブログとしても、応援させていただきます。」なんて書いたこともありました。

 あれから7年。今、素直に応援しますという気になれなくなっています。

 今回は、その辺のお話を詳しく。


(開始当初のチラシ)



 竹富島の入島料は、「祖先より受け継ぎ育んできた自然、祭事や習慣、伝統工芸や町並みを、皆さまとの協働で10年後、20年後・・・100年後とつないでいく」ことが目的とされています。

 海浜清掃、珊瑚の保全など、入島料を財源に行う24の事業を挙げているほか、その3分の1をトラスト活動に充てるとしています。

 トラストとは、自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を目的として、地域内の土地等を取得することで、開発事業者等から、土地を取得する資金に充てることができます。


 かつて、コンドイ浜に隣接する土地でリゾート開発計画が進められ、島民はこれに強く反対しました。

 この計画は、コロナという神風のおかげもあって頓挫したようですが、私有地である以上再び開発計画が持ち上がる可能性もないとは言えません。

 そこで、トラスト基金によって、そういった土地を買い上げようとするものです。この場合、一定の条件下で国の補助金も得られます。

 だからこそ、頑張って欲しいと当時は思ったのです。




 この事業は、一般財団法人竹富島地域自然財団によって行われています。財団の収入は、入島料のほか、営利事業、補助金、寄附などによって賄われています。 


 2020年度の入島料収入は592万円でした。これは、竹富島に行った人の10.5%が入島料を支払った計算になります。
 同様に、

2021年度:   732万円(13.7%)
2022年度:1,289万円(11.2%)
2023年度:1,135万円( 9.7%)
2024年度:   945万円(8.0%)

 となります。
  


 問題は支出です。公表されている最も新しいデータは2024年度のものですから、この年の収支を詳しくみていきます。


 総収入は1,337万円
(入島料945万円・助成金245万円・その他収入が145万円)
注:端数処理しているので合計額と一致しません

 支出の内、管理費が537万円、そのうち役員報酬が207万円・給与手当が192万円となっています。

 助成金とは、環境省所管の地球環境基金からの助成金で、御獄の保全活動などに助成されたものです。


 これを見て気が付くのは、

 管理費が高すぎる。


 ということです。

 助成金は、10%以内の範囲で事務費として使用できるので、管理費の内25万円が助成金から支出されたとしても、残り512万円は入島料収入とその他収入の合計1090万円の中からから支出された計算になります。

 これは助成金以外の収入の約47%に当たります。


 中でも役員報酬が気になります。役員報酬の207万円は、助成金を除いた収入額の約2割を占めます。

 そうすると、入島料300円のうち、60円ほどが役員報酬に廻され、90円弱が給与費その他の管理費として使われ、実際に事業に使われるのは150円ちょっと、という可能性が高いのです。

 いや、可能性どころか、財団の収益構成からすれば、「当たらずといえども遠からず」であることは確実です。


 しかもこれは、決算書を追いかけて初めて分かる数字です。「お支払いいただいた入島料の50%弱は、財団の管理費に使わせていただきます」というアナウンスはどこにもありません。

 
 役員報酬は、2020年度は51万円でした。2022年度に81万円になって、2023年度には205万円に跳ね上がっています。

 ですが、2023年度に役員の増員があったわけでもありません。明らかにされていない何らかの理由があって、役員報酬が改定されたのです。


 追記:
 このブログをアップしたのは8月25日ですが、8月24日に2025年度の決算が発表されています。
 後日、分析して、追記するか、別記事でアップします。



 過去記事にも書いたことがあるのですが、2023年頃から竹富港のターミナルで「入島料の納入はお済みでしょうか。まだお済みでない方は・・・」という放送が頻繁に流るようになりました(今年は確認していませんが)。

 「納入」という日本語は、義務を前提とした言い方です。任意の協力金に対しては不適切な用語ですが、最初は単なる言葉の問題だと思っていました。

 実は、もっともっと深い意味がありそうなのです。



(竹富町の第2次竹富島地域自然資産地域計画より)



 自分の不勉強を恥じるしかないのですが、正直に告白すると、この事業は、竹富島が独自に行っているものだとばっかり思っていました。

 しかし、そうではなくて、行政としての竹富町の事業であり、島の財団に事業委託をしていたのです。


 委託といえば、普通は、委託料を払って代わりに事業を行ってもらうとか、料金の徴収事務を代わりにやってもらって手数料を払うといったことが多いのですが、本件の委託はちょっと変わっています。

 入島料(町では入域料と呼んでいます)の収受、その管理・運用まですべて委託しているのです。

 つまり、入島料という仕組みを創ったから、それを使って財団を運営して事業をしてくれ、という委託なのです。

 そもそも、そんな委託の仕方があるのか、という気もしますが、それは措くとしても、このケースでは町の責任はどうなるのでしょうか。


 仮定の話ですが、財団が不正な経理をして第三者に損害を与えた場合、町は賠償責任を負うのかといった問題です。

 この辺がどうもスッキリしません。




 また、興味深いことに、竹富町の第2次竹富島地域自然資産地域計画には、入島料の支払いは任意としながらも、竹富町民等は徴収免除の対象とするという記述があります。

 徴収という日本語は、法律に基づいて強制的に集めるという意味です。
 その上、竹富町民は「徴収」が免除されているわけですから、「自分達の島のために入島料を払おう」と思っても、制度上はその受け皿が用意されていないことになります。

 これは摩訶不思議ですよね。


 2018年11月21日に八重山日報が報じたところによれば、当時、任意という前提ではあるものの、船の運賃に上乗せして「徴収」する条例が検討されていたが、船会社が拒否したため、今の方式になったそうです。

 例えば、竹富島往復乗船券が1500円だとすると、窓口で券を買おうとすると1800円が請求されます。
 そして、「入島料は払いません」と申し出ると、1500円になるような仕組みが考えられていたようです。

 船会社は、その手間を嫌ったとされています。


 つまり、任意といいながら限りなく税金に近い制度設計をしていたようで、これは紛れもなく、訪問税のフォアランナー(先駆け)であったわけです。

 「納入はお済みですか」は、不適切だと思っていましたが、当事者にとっては、「何が問題なの?」という感覚なんでしょう。




 この事業は、2019年に始まりましたが、5年ごとに見直すとされています。

 5年目を控えた2023年11月1日、町と財団からなる地域自然資産協議会が開催され、次の5年の事業計画が検討されました。

 沖縄タイムスは同月5日、この協議会に関し、「収入目標は年間6000万円だが…実際は1100万円 なぜ停滞?」という記事を掲載しています。

 それによれば、当初は運賃上乗せができなくても、4割くらいは払ってくれるだろうから、来島者が50万人として、6000万円くらいの収入になると見込んでたようですが、捕らぬ狸の何とやら、に終わったようです。

 それに加えて、入島料を払ってくれる人の割合は、2021年度の13.7%をピークに年々減少し、2023年度は9.7%、2024年度は8.0%まで落ち込んでいます
 
 それでも、収入に応じて管理費を縮小するといった、身の丈に合った運営に変更されることはありませんでした。


 その結果、半分ほどしか事業に使われない入島料の「納入」が呼びかけられる、それが竹富島の入島料の現在地だと言えます。




 赤瓦の屋根の木造の家、石積みの塀、舗装をせず白砂を撒いた道、咲き乱れる花。 

 竹富島の伝統集落は、竹富島にとどまらず、全沖縄を代表する景観ですが、その陰で島民の生活の利便性は大きく制限されています。

 それでも伝統を守っていこうとする島民の姿勢を、自分はリスペクトし、及ばずながら協力したいと思っていました。それは、素直な気持ちでした。


 しかし、次に行った時に入島料を払うかと問われば、「ノー」かも知れません。


 竹富島憲章には、「美しい島を守る」という項目の中に「道路、各家庭には、年二回海砂を散布する。」という条項があったのですが、2017年に削除されています。




竹富町の計画については、こちら

財団の収支については、こちら


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2026年8月17日月曜日

竹富町の訪問税振り出しに戻る




 竹富島や西表島に行くと、もれなく1000円の税金が付いてくる。

 そんな竹富町の訪問税ですが、既に条例が制定され、実施に必要な手続として国と協議中でしたが、どうやら国から差し戻されたようです。


 6月12日付け琉球新報デジタルは、「国が同意せず」と報じました。

 また、5月26日の参議院決算特別委員会で答弁した総務省の福田官房審議官は、

 「町民を一律で非課税とし、町民以外だけを課税対象とすることが公平なのか、様々な手段による訪問者がある中で適切に税を徴収することができるのか、といった論点について指摘している」

 と述べています。


 どういうことなのでしょうか。




 竹富町の訪問税は、竹富島、小浜島、黒島など竹富町の各島に行く人に、1人1回1000円の税金を課すものです。

 目的はオーバーツーリズム対策。だから、竹富町民は非課税。しかし、集めた税金はオーバーツーリズム対策に限らず町が自由に使える「普通税」なのです。



 当初案では、船の運賃に上乗せして徴収する方式で、早ければ、2024年度から実施したいとしていました。

 しかし、安栄観光、八重山観光フェリー、石垣島ドリーム観光が、徴収事務を許否したため、申告納税方式に改めた上、昨年の6月13日の竹富町議会で、賛成10、反対1で竹富町訪問税条例が可決成立しました。



 地方公共団体が、新たに税金を課すためには、地方税法の規定により総務大臣の同意が必要です(普通税の場合669条)。

 ただし、総務大臣は、協議があれば原則として同意しなければならず、次の場合に限って同意しないことができるとされています(671条)。

1 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること。
2 地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。
3 前2号に掲げるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと。


 国会答弁で明らかになった、「町民を一律で非課税とし町民以外だけを課税対象とすることが公平なのか、様々な手段による訪問者がある中で適切に税を徴収することができるのか」という点は、上記の項目に当てはまらないようにも見えますが、国は、税の公平性といった根本原理を指摘したようです。




  問題点は二つです。

 一つは、竹富町民には税が課されないことです。

 税金には、普通税と目的税があります。目的税はその名の通り特定の目的のために課す税金です。
 例えば、オーバーツーリズム対策のために使うための税なら、目的税です。

 ですが、竹富町の訪問税は普通税です。オーバーツーリズム対策に限らず、町が自由に使える財源です。なのに何故町民には課税しないのか、国はそこを突きました。


 二つ目は、税の徴収の公平性です。

 訪問税は、島に行った人が、自ら申告書を提出し、併せて納税する仕組みです。

 しかし、島に行った人が申告・納税をしない場合でも、町がそれをすべてを補足し滞納処分をすることができるのか、できなければ真面目に払った人との間で不公平ではないか、という問題です。

 ザル法という言葉があります。ザルから水がすり抜けてしまうように、抜け道や例外が多く、法律としての規制や効果が十分に果たされていない不備な法律を意味するのですが、今のままでは、竹富町訪問税条例は画に描いたようなザル法、ザル条例です。



 この点、訪問税条例には、別の規定もあります。町長が特別徴収義務者を指定することができるというものです。

 特別徴収義務とは、本来の納税義務者から税を預かってまとめて納税する義務です。

 つまり、安栄観光など船会社を特別徴収義務者に指定し、運賃に1000円上乗せ徴収をして町に払えと命じることが、条例上はできることになっています。

 しかし、船会社がノーと言っているなかで、一方的にそんなことをしたら、反発は必至です。


 以下推測ですが、

 町は、国との協議に時間がかかることを見越して、機能不全を承知で申告納税方式で一旦条例を創り、協議の間に船会社を説得するつもりだったのではないでしょうか。
 
 しかし、「船会社はそのうち説得するから、取り敢えず今の条例で同意してね。」という作戦は、国に見透かされたようです。


 

 国は、最終的に地方財政審議会という第三者機関に諮ってから同意するかどうかを決めます。

 琉球新報は、「国は不同意」と報じましたが、まだ審議会には諮られていません。

 したがって、今の段階では、審議会に諮っても同意を得られない可能性が高いから、もう一度見直したらどうか、と町に投げ返した段階だと思われます。

 もちろん町は、「条例は手直ししない。白黒ハッキリしてくれ。」と突っ張ることは可能です。


 ただ、どう転んだところで、町が目指していた2026年度中の訪問税実施は、もう間に合わないことは確実で、一番最初に想定していた2024年度からは相当遅れることになります。


 追記
 6月30日に開催された竹富町議会報告会で、
 「現在、総務省との協議が続いておりますが、町民を一律非課税とする点について「税の公平性の観点から慎重な整理が必要」との指摘を受け、制度の再整理を行っている段階です。また、特別徴収義務者を担っていただきたい船会社との実務調整も再開されており、当局からは「今年度中の施行は厳しい」との見通しが示されました。」
との報告がされていました。(8月18日追記)




 当ブログは、最初から訪問税に反対しています。

 行く度に1000円も取られるのは嫌だという率直な思いもありますが、それは措くとしても、税の仕組みがおかしいと思うからです。

 税の使い道をオーバーツーリズム対策に限定した目的税とするか、使途を定めない普通税にするならば、町民も課税対象にしないと理屈に合いません。



 パブリックコメントにも意見を提出しました。その詳細は、ブログとは別ページの竹富町の訪問税についての意見にまとめ、リンクを貼りました。
 

 別ページにしたのは、マニアックな法律の話なので、ブログに書いても退屈なだけかなと自嘲したのです。


 そのとき、このページの閲覧数が100を超えたら自分で祝杯を挙げたい、なんて書いたのですが、いつの間にか閲覧数は239に達していました。

 細かい法律の話でも、読んでくれる人が一定数いるということが分かって、ちょっと気を良くしております。


 この竹富島訪問税の仕組みには、もっと色々な課題があることが分かってきました。そんな話や、訪問税のフォアランナーと言うべき竹富島の入島料の話も、近いうちに書きたいと思います。



 当ブログは、当初から「沖縄に関すること」というのが唯一の縛りで、その中で自分が書きたいことは何でも書いて来ましたが、特に最近は、水着女子から法律や税まで、ちょっと暴走気味ですんません。



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2026年8月10日月曜日

謎の「限定」泡盛 宮古島菊の露酒造の「島」





 泡盛にしてはちょっとオシャレないでたちの「島」。

 宮古島にある菊の露酒造が、今から約20年前に宮古島市発足を記念して限定販売したものです。


 ところが、「島」は今でも売っている。何で?




 この「島」は初代です。

 宮古島市発足を記念して、古酒3年・5年・8年物をブレンドしたアルコール度数30度の、宮古島限定品として販売されたものです。

 ラベル裏に「宮古島市誕生の喜び祈念して」とあります。

 祈念とは、神仏に願いが叶うように祈るという意味なので、この場合「記念」の間違いでは?と思っていたら、いつの間にか訂正されていました。



 一方、「島」は引き続き製造され、2代目は、3年古酒25度の沖縄限定品として販売されコロナの前の頃までに終売し、3代目は、30度の新酒で宮古島限定で今も販売されています。


 限定とはなんぞや?という大変奥深い問題に・・・笑





 雑談ですが、以前は泡盛の古酒とは、新酒と古酒をブレンドしても、古酒が51%以上ならば古酒と名乗っていたのですが、2015年8月から、3年以上寝かせた古酒100%でなければ、古酒と名乗ることはできなくなりました。

 これは、業界の公正競争規約(表示ルール)によるものです。



 ところで、何で口開けしないのか、と言われるかも知れませんが、 実は、ちょっとおいそれとは飲みにくい事情があります。


 このボトルは、沖友さんからいただいた物ですが、この沖友さんの弟さんが約20年前に宮古島に行き、お土産としてこの「島」をケースで買ってお姉さんのところに送りました。

 ところが、その弟さんは直後に急逝してしまい、結果として、いただいたボトルは形見分けということになってしまったのです。


 
 そんなわけで今まで、暗い場所で、時々揺すったりしながら大切に保管してきました。

 しかし、酒は飲むものですから、何かきっかけがあれば大事に味わいたいと思います。

 瓶詰め当初から古酒のブレンドで、あれから約20年も経っている訳ですから、どんな香りがして、どんな口当たりで、どんな喉ごしなのでしょうか。

 楽しみ ♪





 「島」の歴史について、AIに聞いたところ分からなくて、代わりに菊の露酒造のサイト内の問い合わせ窓口が示されました。

 それで、問い合わせた結果分かったのですが、悔しいからAIに教えてやんない。



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