竹富町の訪問税は、
オーバーツリズム対策に見せかけて、町民は何の負担もせず来島者の負担で町の財政を豊かにすることが目的の税である
と考えます。
いきなり過激な書き出しですが、訪問税について調べれば調べるほど、そう思わざると得ないのです。
当ブログは始めから訪問税に反対していますが、今回はその総まとめです。
竹富町の訪問税は、竹富島、小浜島、西表島などの各島に行く人に、1人1回1000円の税金を課すものです。
5000円で1年間有効のサブスク制度があります。
来島者は、自ら町に申告して納税します(船賃に上乗せされる訳ではありません)。
竹富町民は非課税です。
集めた税金の使い道に制限はありません(普通税・一般財源)。
現在、町の条例はできましたが、総務大臣の同意が得られず、宙に浮いています。
そもそも何故、観光客が税金を納めなければならないのでしょうか。竹富町訪問税条例の第1条には、次のように書かれています。
(趣旨)
第 1 条 この条例は、竹富町への多くの観光客等の来訪によって発生し、又は増幅する行政需要に対応するために課する竹富町訪問税(以下略)。
一見すると、オーバーツーリズム対策のため、ですよね。
町が行ったアンケートでも、「素晴らしい自然や環境が保持されるなら喜んで払う」とか、 「オーバーツーリズムによる弊害と、唯一無二の自然や文化などを維持するために必要」といった意見がありました。
しかし、訪問税は普通税(町の一般財源)です。
条例を議決した町議会は、今年6月のパンフレットで「訪問税を活用した持続可能な島々づくりの推進に関する決議」をしたと明らかにしました。「訪問税を活用した自然や文化の保全」ではありません。
ちょっと話が違いませんか。
では、何故竹富町民は非課税なのでしょうか。
条例の提案理由には、「竹富町への来訪者によって発生及び増幅している標準以上の行政需要の一部を原因者である来訪者に負担していただき、町民負担を軽減」とあります。
ここで、原因者課税という考え方がでてきます。検討段階から一環して述べられている、訪問税のキモとなる考え方です。
来訪者のために使った税金分は、原因者である来訪者が負担してくれ、町民は、原因者ではないから納めなくて良い、という理屈です。
一見もっともらしく見えますが、本当にそうでしょうか。
例えば竹富島の場合、就業人口の87%が第三次産業の従事者で、40.6%が飲食・宿泊業に従事しています(令和2年国勢調査)。
多い時は、水牛車を牽く水牛が38頭、貸し自転車は2000台あったそうです。
第一次産業、第二次産業の従事者は、それぞれ5.7%しかいません、竹富島は観光業を生業とする島です。観光客が島民の生活を支え、町の税収にも反映されています。
来訪者が原因で税金の支出が増えたから負担せよというならば、来訪者のおかげで得られた税収は差し引いてもらわなければアンフェアですよね。
竹富島と石垣島は、夏の間は1日十数往復の船便で結ばれています。島民は、好きな時間に石垣島に渡り、帰ってくることができます。
しかし、竹富島の人口は約340人。そのうち半数が毎日石垣島に行くとしても、1便当たり10人程度。
もし、観光客が船に乗らなければ、船会社は大赤字で、大幅減便は避けられません。島民は、観光客のおかげで多大な恩恵を被っています。
便益はいただくが、税金は負担はしない、つまり、give and take ではなく、take and take なのです。
日本語で言えば、やらずぶったくり、というところですか。
原因者課税という考え方は、観光客に来られては迷惑な場所、スラムダンクの聖地となった鎌倉高校前踏切とか、背景に富士山が見えるローソンとか、そういう場所には当てはまるかも知れません。
観光客に来てもらわなければ困る場所には、無理筋の理屈です。
訪問税の使い道として例に挙げられているものの中には、Wi-Fiの設置、観光客の利用する道路・駐車場の整備といったものがあります。
Wi-Fiは、観光客が増加したためやむ得ず設置するものでしょうか。観光客の利便を図り誘客するための設備ですよね。
「便利にしといたからその分金払ってね。」ってそんなのあり?
島にマイカーで行く観光客はゼロです。観光客は、島に着いてから、レンタカーやレンタサイクルを借りるしかありません。
仮に道路や駐車場の整備が必要になったとして、その原因者は金を取ってレンタカー・レンタサイクルを貸す事業者ではなく、観光客だというのです。
改めて、何故竹富町民は非課税なのでしょうか。
そうしないと町長も町議も選挙を闘えないからです。観光客からは税金は取りたい、でも町民は非課税にしないと反発を喰らう。原因者課税は、そのための理屈として都合良く使われたのでしょう。
以上は、憶測ですが、自分では間違いないと思っています。皆さんはどうでしょうか。
訪問税には、ほかにも問題点があります。
この理屈で竹富町の訪問税が認められるならば、全国何処の市町村でも訪問税ができてしまいます。
何処かに行く度に、申告して税を払わなければならない。やったもの勝ち。そういう道筋をつくってしまいます。
また、竹富町の想像力が欠如していると思うのは、石垣市が訪問税を導入したらどうなるかということに考えが及んでいないことです。
竹富町民は石垣島に行かなければ生活ができません。買い物をするのも、病院に通うのも石垣島です。そもそも、竹富町役場自体石垣島にあるのです。
竹富町の訪問税は、石垣市民からも徴収するわけですから、石垣市訪問税ができたら、竹富町民は当然課税対象でしょう。
訪問税は、竹富町が導入したとしても、石垣市は導入しないだろうという、根拠のない前提で支えられているのです。
さらに、法制度上、最も困難な課題が待ち受けます。憲法適合性の問題です。
憲法第22条は、何人も居住、移転の自由を有すると規定しています。その前提となる移動の自由もここに含まれるとされます。
移動したい人に課税するということは、結果として、憲法で保障された移動の自由という人権を、少なからず制約します。
ですから、そうすることにやむを得ない合理的理由があり、他の手段(より制限的でない他の選びうる手段)では代わることができないか、検討されなければなりません。
ところが、竹富町はこの点を全く無視しているのです。
パブリックコメントに対する町の回答には、「合理的な理由に基づき、地方税法等に定められた手続きに則り(中略)進めております。日本国憲法に抵触する恐れはないと考えております。」とありました。
理由が合理的(だとしても)で、きちんと手続を踏んだらすべてOKではありません。今ここで問われているのは、目的を達成するための手段の相当性です。
来島者に1000円を課税するという手段の、合理性や代替性は検討していませんと、公式に回答しちゃった訳ですから、これはちょっとヤバイです。
さらに、もっとヤバイ話があります。
パブリックコメントには、どの島に行くのも税額が同じなのはおかしいという意見が相当数寄せられました。
これに対する町のぶっ飛び回答は、
「税制度は憲法第 14 条第1項の規定により「税の下の平等」が厳格に定められており、同一自治体内で課税額に差を付けることは不公平な課税とみなされるため、島毎に課税額を変えることはできません。」
というものです。この「税の下の平等」という言葉は、町の回答に何度も登場します。
憲法第14条に書かれているのは「法の下の平等」です。「税の下の平等」なんて聞いたこともありません。
AIで調べたところ、「税の下の平等」という言葉は、竹富町のサイト以外には見つかりませんでした。
「税の下の平等」は、日本中で竹富町だけの独自理論です。
人は、税の下に平等である、なんて嫌な世界ですよね。回答をこっそり修正しないうちに、ダウンロードしておきました。笑
「竹富町への多くの観光客等の来訪によって発生し、又は増幅する行政需要」かどうかは別として、現状、何らかのオーバーツーリズム対策が必要だとしても、それは、島によって事情が違います。
島の面積の8割がジャングルだという西表島では、自然保護のためするべきことはあるでしょう。一方、観光客の少ない黒島では、何かしたの?というレベルです。
だったら、訪問税額は、西表島は500円、黒島50円としても良さそうですが、「税の下の平等」に反するからできないそうです。
だったら、観光客は課税、町民は非課税というのは「税の下の平等」に反しないのでしょうか。
多少なりとも法律を囓ったことのある身としては、いやしくも地方公共団体が、こんなレベルの法律論を表にさらすなんて信じられません。
長年の沖縄好き、八重山好きとしては、税金を払ってでも将来のためにやって欲しいことは、珊瑚の海を護ることです。
石垣島と西表島の間には、日本で最大の珊瑚礁である石西礁湖(せきせいしょうこ)があります。
ダイビングやシュノーケリングで、珊瑚礁を見たことがある人は、その美しさと自然の驚異に感動したと思いますが、近年、白化などで多くの珊瑚が死滅しています。
しかし、訪問税の使い道には、珊瑚礁の保全は示されていません。石西礁湖は町の管轄外だからでしょうか。
だとしても、せめて、島の周りの小さな珊瑚礁を護ることはできると思います。
上の写真は、波照間島のニシ浜で撮ったものです。撮ったのは2012年ですが、今は、この場所でこんな光景を見ることはほとんどできません。
Wi-Fiなんてどうでもいいから珊瑚礁を護って そう思いませんか?
※ 訪問税に関する竹富町の発表はこちら。
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