2024年1月5日金曜日

竹富町が訪問税 なんと!1回2千円

  

 竹富島や西表島などに行こうとして乗船券を買ったら、税金分として2千円が上乗せされていた。そんなことが起こりそうなのです。

 しかも、早ければ2024年度中にです。




 新年早々嫌な話題ですが、我々観光客にとって無視できない話です。


【なにが起きているのか】

 琉球新報、沖縄タイムスなどの地元紙が報じたところによれば、竹富町は、竹富島、西表島など、竹富町に属する各島に行く人に対し、訪問税として一人1回につき2千円を課税することを検討しているというのです。


 そして、

・訪問税は、法定外普通税とする。
 (この法定外普通税というのがキーワードです。覚えておいてください。)

・徴収は、乗船券に税金分が上乗せされる形で行われる。

・町民は非課税とし、事情があって来訪する者には減免措置がある。

・町が設置した有識者による審議会で既に了承され、1月中にパブリックコメント(意見公募手続)を行い、3月までに条例化する。

・その後、所定の手続を経て2024年度中に実施したい。

 ということだそうです。理由については、オーバーツーリズム対策ということ以外、具体的には報じられていません。

 竹富町のホームページには、記載日現在、訪問税についての説明はありません。



【他市町村でも同じことをしているのか】

 沖縄県内では、伊是名村・伊平屋村・渡嘉敷村・座間味村が、使途を特定した法定外目的税として、環境税などを入域者一人1回につき100円を徴収しています。

 法定外普通税としては、安芸の宮島のある広島県廿日市市で、宮島訪問税1回100円が徴収されています。


 似たような例として、宿泊税を課している自治体は数多くあります。

 税額は、全国で一番高い京都市の場合でも、1泊5万円以上の宿泊に対して1000円となっています。東京都では、宿泊代金に応じて、最高200円が課税されています。


 このような横並びの比較では、そこに行くだけで2千円というのは、桁外れに高いということになります。


 竹富町が公表している年間の入域観光客数は、2019年が1,095,259人、2022年が730,250人となっています。

 これに単純に2千円を掛ければ、税収見込みは、コロナ前の2019年を基準に考えれば約22億円、コロナ後5類移行前の2022年を基準にしても約15億円となります。

 (課税によって観光客が減らなければ、という前提ですが。)


 ちなみに、竹富町の一般会計は、2021年度の決算では、歳入総額は約130億円で、そのうち町税収入は約4億6千万に過ぎません。




【船会社の反応は】

 訪問税は、石垣港で乗船券を買う際に上乗せされることになります。安栄観光、八重山観光フェリー等が、特別徴収義務者とされます。


 このことに関し、八重山毎日新聞によれば、

 「八重山観光フェリーの大松宏昭代表取締役社長は、『竹富島の往復船賃より高いなんてあり得ない。何かの間違いかと思った。0が1個多いと目を疑った。大変な額。利用者が納得して払うとは思えない。社としても容認できない』との考えを示した。」
 
 「安栄観光の森田安高代表取締役は、『とんでもない額だ。竹富町への観光客が減るだろう。そうなると、つぶれる観光事業者も出てくる。船会社は、燃油サーチャージで100円上げるだけで苦労しているのに、その20倍の訪問税を徴収することはできない。現実的な税額ではない』と疑問を呈した。」

 とのことです。


 そりゃそうでしょう。乗船券に税金分が上乗せされるのだから、苦情や不満は、船会社の窓口が引き受けなければなりません。

 その上、船を利用する観光客が減れば、燃油高や人手不足で、ただでさえ厳しい経営状況が益々悪化します。



 参考までに1月現在の運賃で計算すると、石垣から竹富島までの往復運賃は、1,520円から3,520円になります。

 同様に、西表島大原は、3,960円から5,960円に、波照間島は、7,830円から9,830円になります。





【訪問税に反対します】

 当ブログも、竹富町の計画している訪問税に反対です。理由は以下のとおりです。


2千円という金額は妥当なのか

 ほとんどの人が、直感的に2千円はあり得ないと感じると思います。もちろん自分もそうです。
 オーバーツーリズムの対策として、観光客もある程度の負担をすることは、現状やむを得ないとは思いますが、それこそ「0」が一つ多いと思います。


 しかし、もっと重要な問題があります。堅い話になって恐縮ですが、大事なことなのでお読みください。


 観光客が竹富町に行くことは、権利です。

 日本国憲法第22条は、移動の自由を保障しています。誰でも、日本中何処に行くのも、もちろん竹富町に行くことも、憲法で保障された人権なのです。

 訪問者に一人1回2千円の課税をすることは、自由であるはずの移動に実質的な制約を課すことになると考えられます。

 つまり、来訪者に負担を求めることの是非だけではなく、憲法で保障された人権を制約することもやむ得ないと言えるほどの強い必要性があるのか、ということが問題にされなければならないのです。


 もちろん、公共の福祉の観点から、移動に対して何らかの規制をすることが許されないわけではありませんが、その場合は、目的、手段の妥当性が厳密に問われます。

 例えば、島の自然や文化、住民生活などが破壊されてしまう、差し迫った現実の危機があり、かつ、観光客から1回2千円の負担を求める以外にそれを防ぐ方法がないといった場合には、訪問税もやむを得ないという結論になるでしょう。
  しかし、そんな緻密な検討内容は、まったく伝わって来ません。



 また、竹富町民であれば、他の場所に行って戻ってきても非課税なのは、町民と町民以外の差別にあたります。
 そんな大袈裟な、と思うかも知れませんが、逆を考えてみれば分かりやすいと思います。

 竹富町民が、石垣市に、那覇市に、東京都に行こうとした時に、それぞれの自治体から税金2千円を支払えと言われたらどうなるか、ということです。

 竹富町民が、飛行機に乗って羽田空港に行く場合、航空券の価格が都民より高ければ、町民は不満に思うでしょう。

 東京都民が竹富町に行く場合と、竹富町民が東京都に行く場合では、何がどう違うのか、その違いは一人1回2千円分に相当するのか、そこがきちんと説明されない限り、不公平な措置ということになります。


 町が内々に検討して、それを地元紙だけが報じているという現状ですが、町は、ホームページなどで堂々と目的や理由を説明するべきです。納税者は、町民ではなく、町民以外の全国民なのです。


 町のことだからといって、すべて町だけで決定できる訳ではありません。竹富町が日本国である限り、我が国の憲法や法律に従わなければなりません。

 
何故普通税なのか

 税金には、普通税と目的税があります。総務省のHPによれば、

 「普通税とは、その収入の使い道を特定せず、一般経費に充てるために課される税を指します。一方で、目的税とは、特定の目的のために課される税であり、その使い道はあらかじめ定められています。」

 ということです。伊是名村や伊平屋村などが導入しているのは、目的税です。徴収した税は、環境保護などの目的に限って使われます。


 一方、竹富町が導入を進めているのは、普通税です。町が自由に使えるサイフです。オーバーツーリズムへの対策といいながら、目的税にしないのは何故でしょうか。 



 沖縄タイムスには、

 「審議委員会の青木委員長は訪問税導入による観光への影響を踏まえつつ、財政難やオーバーツーリズムなどの持続可能な観光地づくりの課題を挙げ「将来的な投資が不可欠で2千円が妥当との結論に達した」と述べた。」

 TBS NEWS DIGには、

 「インフラや防災関連施設の整備といった来訪者を迎えるための安定的な財源の確保が課題となっています」

 などとさり気なく書かれていましたが、普通税であれば、観光客から徴収した税金で、観光とは無縁なハコ物施設を造ることだって可能になるのです。
 
 町の将来的な投資のためだとしても、何故それを観光客が負担するのでしょうか。



 嫌みを言わせてもらえれば、前竹富町長は、海底送水管の設置に関し、官製談合防止法違反、加重収賄などの罪で、懲役3年6か月の実刑を喰らっています。

 言うまでもないことですが、観光客の負担で、特定の者が潤うなどということは、絶対にあってはなりません。



 竹富町が観光客のための何らかの支出を強いられるとしても、それは、本来観光業に従事する者が享受する利益に課税して賄うのが筋です。

 ただ、急激に観光客が増加し、町の財政規模からして十分な対応が困難であって、放置すると島の自然や文化が破壊される恐れがある場合に、不足分に限って目的税として徴収したいというならば、話は別です。


 もしも、観光客は黙っていてもやって来るから、取りやすいところ取ればいいという発想であるならば、本当に、本当に残念です。





【竹富島の入島料】

 竹富島は、2019年から、来島者に任意で入島料300円の支払いを求めています。

 自分は、その趣旨に賛同し、竹富島に行った際には、日帰りも含めて欠かさず入島料を支払って来ました。

 島では、入島料を支払う観光客が想定より少ないということで、強制徴収できる税方式にしたいという声があることは承知していました。


 今回の訪問税は、行政主体としての竹富町が検討しているもので、竹富島とは直接関係ありませんが、もし竹富島公民館が訪問税に反対しないならば、自分は、今後、竹富島に行っても入島料を支払うつもりはありません。


 そして、訪問税が実施されたら、今までのように、時間があるからちょっと竹富島に日帰り、などという遊び方は止めて、長期滞在する場合に限り慎重に検討して、どうしても行きたいときだけ行くことにしようと思います。





【今後のスケジュール】

 報道によれば、今月中にパブリックコメント(意見公募手続)が行われます。町のホームページで公表されるでしょう。

 ただ、竹富町は、パブリックコメントに関しての条例を制定しておらず、都度、要綱を定めて実施しているようなので、詳細は分かりません。

 事柄の性質上、税負担者となる観光客の意見を広く聞くべきですが、意見は町内関係者に限られる可能性もあります。

 また、一般的には、「意見は聞くが聞き置くだけ」というケースが多いので、パブリックコメントでひっくり返る可能性は低いと思います。


 その後、町議会に条例案が諮られ、議決されると、次は総務大臣との協議が必要です。

 総務大臣は、地方財政審議会という第三者機関の意見を聞いた上で、同意するかどうかを決定します。

 同意が行われると、一定の周知期間を経て訪問税が実施されます。


 スケジュール的には、今年の夏には間に合わないと思われます。





 今年の夏は、竹富島や、西表島、波照間島などに気軽に行ける最後のチャンスとなるかも知れません。 


 石垣島まで行って、綺麗な海を求めて竹富島や波照間島まで行っていた人は、これからは宮古島を目指した方がいいかも知れません。

 宮古島も問題なしとは言えませんが、少なくとも来島者に税金を払えとは言っていません。

 波照間島のニシ浜級の綺麗な海が点在しています。人のいないプライベートビーチみたいな穴場もまだまだあります。


 それでは、離島のゆったりした雰囲気が味わえないという人は、粟国島なんかどうでしょう。那覇から行けるし、フェリー運賃は往復6,590円です。

 港に「環境協力金100円をお願いします」という募金箱があるだけです。

 ウーグ浜は、人のいない広くて綺麗なビーチです。





 もし本当に訪問税を導入するなら、「ゴミは持ち帰れ」なんて言わないでくださいね。ゴミ処理費用には十分すぎる負担を課す訳ですから。

 これだけの負担を求めるからには、休憩施設やトイレなどはきちんと清掃し、観光客がいつでも気持ち良く使えるようにしてください。

 壊れた標識や看板は、直ちに補修してください。歩きにくい歩道は即座に修繕をお願いします。草刈りもこまめに行ってくださいね。

 町民は率先して、自然環境を守ってください。ゴミのポイ捨てなんて論外です。まさか、立ちションするとか、タバコの吸い殻をそこいらに放り投げるなんて絶対にないですよね。

 
 観光客が減って、安栄観光や八重山観光フェリーが経営難に陥るかも知れません。また、影響を受ける観光業者が続出して、町が支援をする羽目になっても、国の補助金に頼らず町単独費でお願いします。


 何しろ、全国で唯一無二のやり方で自主財源を手に入れるわけですから。





 続報(R6.3)はこちらから。


 琉球新報の記事はこちら
 沖縄タイムスの記事はこちら
 八重山毎日新聞の記事はこちら


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