石垣島にあったペンションぱいらんど。
夕食時には必ず、お客さんと宿の人がゆんたく。しばらくすると、おじぃ・おばぁが、三線を弾き始め、皆で唄って最後はカチャーシーを踊って・・・
宿にお客さんがいる限り、一年中毎日繰り返される光景でした。
沖縄の旅を続ける中で、沖縄の人は本当に三線が好きなんだな、音楽が好きなんだなと常々感じているのですが、今回は、そんなことを少し書かせてもらおうと思います。
三線(さんしん)は、弦が三本の弦楽器です。内地の三味線と似た楽器で、沖縄三味線などと言う人もいます。
諸説あるようですが、中国の三弦という弦楽器が起源で、奄美や沖縄に伝わったものが三線で、内地に伝わったものが三味線になったようです。
それにしても、沖縄の人は本当に三線を弾いて唄うのが好きです。
石垣港の離島桟橋を夜散歩していると、どこからともなく三線の音色と歌声が聞こえて来たりします。
昼間、海を臨むちょっとした休憩所、四阿でも同じようなことがよくあります。普通の集落で、おじぃが家の縁側や庭の木陰で三線を弾いているなんてことも。
墓前で三線を奏でることも普通にあるそうです。
それなりの規模の街には、必ず民謡酒場があります。
それは、三線ライブハウスというような立派な設備を備えている所もありますが、ただ小さなステージがあるだけ、という所も堂々と民謡酒場を名乗ります。
演者が唄いながら、客の周りを歩いて回る店もありました。
客は、観光客だけかと思いきや、意外にも島の人も飲みに来るのです。
そして、最後は皆でカチャーシーを踊るのがお約束。
カチャーシーは、テンポの早い曲に合わせて、皆で踊ることですが、頭上で手を振りながら進んでいくだけなので、誰でも見様見真似で踊れます。
ちなみに、カチャーシーとは、かき混ぜることを意味する島言葉の、かちゃーすから来ているとのこと。頭の上で手を振ることが、かちゃーすしているように見えるからだそうです。
冒頭紹介した、ペンションぱいらんどのように、泊まれば必ず三線弾いて唄う宿は、最近は少なくなりましたが、それは、島の人が経営する民宿などの個人宿が減っているからで、三線が下火になった訳ではありません。
はいさいおじさんで有名な喜納昌吉氏は、かつて参議院議員も勤めたのですが、初登院の際、三線を弾きながら入場するパフォーマンスを演じ、衛士に止められたというエピソードがあります。
昨年、台風で飛行機が欠航し、お客さんが3日ほどホテルに閉じ込められるはめになったのですが、宮古島のホテルでは、慰労のための三線ライブ演奏会をしたそうです。
三線好きに加えて、もう一つ、沖縄音楽で特徴的だと自分が思うのは、その曲が限られていることです。
つまり、様々な曲がバラエティー豊かに演じられるわけではなく、レパートリーが広くない、有り体に言えば、ワンパターンなのです。
その定番の曲としては、民謡系では、「安里屋ユンタ」・「芭蕉布」・「十九の春」・「てぃんさぐぬ花」・「娘じんとよー」・「谷茶前(たんちゃめー)」などが挙げられます。
沖縄民謡まで知らない、という人でも、沖縄に行ったことがある人ならば、恐らくどこかで聞いているというほど、向こうではメジャーです。
「安里屋ユンタ」などは、一度でも沖縄に行けば必ず何処かで耳にしていると思います。
民謡といっても、「安里屋ユンタ」・「てぃんさぐぬ花」などは、昭和になって古謡を編曲したもので、「芭蕉布」・「十九の春」は、作曲者も明らかな昭和の唄ですが、民謡とされているようです。
ヒット曲系もあります、「島人ぬ宝」・「オジー自慢のオリオンビール」・「三線の花」・「涙そうそう」・「花」・「島唄」・「ハイサイおじさん」などです。
こうした特定の曲達が、沖縄定番ソングとして、沖縄の至る処で、三線で弾かれまくって、唄われまくって、流れまくっているわけです。
これこそが沖縄の音楽文化の最大の特徴ではないかと、自分的には思うのです。
ヒット曲系であっても、いわゆるオキナワンポップとは一線を画します。
民謡酒場では、民謡だけではなく、「三線の花」・「涙そうそう」なども唄われますが、安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE」や「HERO」が奏でられる訳ではありません。
竹富島では、水牛車のガイドが、三線を弾きながら島の唄、安里屋ユンタを唄ってみせるのがお約束ですが、ゴミ収集車のメロディまでもが安里屋ユンタなのです。
JTA(日本トランスオーシャン航空)では、以前は、着陸後ドア解放時に流す曲が「花」でした。
「♪ 泣きなさい~ 笑いなさ~い いついつまでも 花を咲かそうよ~」のメロディが流れると(唄はないけれど)、あぁ沖縄に着いたなと、テンションが上がる曲でした。
最近では「空の声が聞きたくて」が流れているようです。
ゆいレール(沖縄都市モノレール)では、発車メロディーや車内チャイムにこれらの定番ソングが使われています。
那覇空港駅でゆいレールに乗ると、車内で最初に耳にする曲、あれが「谷茶前(たんちゃめー)」です。
繁華街の居酒屋で流れる曲も、定番ソングです。
観光客向けの演出としてではなく、地元の人しか行かないようなディープな飲食店でも同じです。
オーナーの趣味でジャズを流すとか、70年代ロックをかける店は、内地に比べれば圧倒的少数派なのです。
宮古島では「なりやまあやぐ祭り」、石垣島では「とぅばらーま大会」というイベントが毎年盛大に開かれます。
「なりやまあやぐ」も「とぅばらーま」も、それぞれの島に伝わる民謡ですが、その一曲だけを競う、三線弾き語りののど自慢大会です。
こうしたイベントは、沖縄以外の他の地域でも行われているのかも知れませんが、驚くのは、内地からわざわざやって来て参戦する人が少なくないことです。
沖縄が好きだと、沖縄の人の三線好きも伝播してしまうようです。
続く
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