2025年1月8日水曜日

沖縄のホテルは供給過剰らしい Ⅲ 宮古島編



  少しお休みしましたが、りゅうぎんレポートを基に沖縄のホテル多過ぎ問題を、今回は、バブルと言われる宮古島(宮古島市)に焦点を当ててみていくことにします。

 レポートでは、宮古島に特化したデータがあまりないので、各種数字から色々推計したのですが、やっているうちに、もしかしたらという仮説に辿り着きました。




 宮古島がバブルと言われる所以は、ホテルの建設ラッシュですが、近年、100室以上の大型ホテルが次々と開業しています。
 
 宮古島来間リゾート シーウッドホテル:169室(2020年8月開業)

 ホテル・トリフィート宮古島リゾート:207室(2021年3月開業)

 ヒルトン沖縄宮古島リゾート:329室(2023年6月開業)

 さらに、キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート:310室(2026年春開業予定)が控えます。


 これ以外にも、数室から数十室規模のホテルも次々とオープンしており、一々挙げていられないほどです。

 いくら何でも多過ぎじゃないかと思いますよね。




 りゅうぎんレポートを基に、宮古島(宮古島市)に限ったホテルの需給バランスはどうなのか、当ブログなりの推計を試みました。


 令和6年度上半期(4月~12月)の入域観光客数をみると、沖縄県全体が4,960,800人。宮古島市のそれが628,856人なので、割返すと12.7%ということになります。

 そこで、沖縄に行く人の12.7%が宮古島に行くとみなして話を進めます。


 宮古島市のホテルの客室数(2023年5月末)は5,150室で、これは沖縄県全体の10.2%です。

 実際の収容人数は不明ですが、2022年の沖縄県全体の収容人数が135.908人ですから10.2%を掛けて13,863人が宮古島のホテルの収容人数と推計します。


 同様に、最繁忙期である8月の宮古島の1日当たりの宿泊者数の推計は、2024年は10,738人、2031年に沖縄県の入域観光客数の目標を達成すると13,279人となります。


 以前の記事でご紹介したように、全沖縄のホテルの稼働率は、2024年の推計で最繁忙期の8月でも62.2%に過ぎず、2031年8月でも76.9%に止まります。

 しかし、宮古島のホテル稼働率を推計すると、2024年8月では77.5%、2031年8月になると95.8%に跳ね上がるのです。

 つまり2022年ベースでみれば、宮古島は、ホテル不足とまでは言えないものの、沖縄の他地域ほどは、ホテルが供給過剰ではないことになります。



 この計算は、データをとった時点が区々のごく大雑把な推計ですが、各事業者も宮古島はホテルの数が相対的に少ないという数字は当然持っていたでしょう。
 だから、開発余地があると考えたのではないでしょうか。

 それに加えて、伊良部大橋開通や下地島空港民営化などのプラス材料があり、石垣島と比べて、リゾート開発に適した土地があることも当然影響したと思います。

 その結果、競うようにホテルを造ることになった、もしかしたら、それが宮古バブルの正体だったのかも知れません。

 


 2023年開業のヒルトンの収容人数は、850人だそうです。

 といってもピンと来ないと思いますが、JTAの主力機B-737-800型機の定員が大体180名ですから、ヒルトンだけで4.7機分に相当します。

 ヒルトンの2期工事といわれるキャノピーbyヒルトン宮古島も、ほぼ同規模です。

 間もなく開業のローズウッドホテルは、55室ですから収容人数は百数十人程度。

 シギラエリアも、絶えず新増築を進めています。

 
 2024年8月の稼働率は、既にリアルの数字が出ているはずです。
 2031年8月の新築ホテル分を加えた最新の推計稼働率も含め、事業者の思惑どおりにことは進んでいるのでしょうか。




 新しいホテルの大部分は、ラグジュアリーホテル、アップスケールホテルといった中・高級ホテルか、あるいは、無人・非接触型宿泊施設の部類です。

 ビジネスホテルと言われるような宿泊特化型のホテルは、宮古島ではあまり増えていないようです。


 りゅうぎんレポートの調査対象外ですが、ペンション・民宿・ゲストハウスといった小規模の宿は、廃業こそ聞くものの、新規開業の話は滅多にありません。

 宿泊客に食事、特に夕食を提供するような宿は、このままでは絶滅危惧宿となってしまうかも知れません。

 決して需要がないわけではないと思います。ただ、そういったスタイルは大規模経営には馴染まず、また、大部分の外国人観光客にはウケが悪いからだと考えられます。

 一方、個人宿では、人手不足とか後継者不足、市街地再開発といった、最近よく耳にする理由で、衰退が進んでしまっているようです。




 広いゴージャスな部屋でゆったりと寛ぎ、プライベートなプールで夏を満喫し、レストランで見た目も豪華な食事に舌鼓を打って、オシャレな雰囲気のバーでグラスを傾ける、なんていいですよね。
 サイフが許せばそんな旅行をしてみたい、と思う人は多いでしょう。

 一方、部屋は広くなくても、夕食時に食堂で初対面のお客さんと同席し、宿のオーナーも交えながら、泡盛を飲んでおしゃべりをするというのはプライスレスなお楽しみです。



 この記事を書いているうちに気が付いたのですが、ホテルがいくら増えようがそれに目を奪われる必要はなかったのです。

 事業者が商機があると判断して着手したのだから、自然破壊や景観破壊に繋がらない限り、どうなろうとあちらさんの問題です。


 ただその影で、ニッチなニーズに対応する小規模の宿が守られるか、ということこそが重要な問題であって、それを支持する客も一緒になって応援することが大切なような気がするのですが、同じような考えをお持ちの人はいらっしゃるでしょうか。



 りゅうぎんレポートはこちら


 新着記事は、X(Twitter) と Facebookでお知らせしています。

 スマホでご覧の方へ
    最下欄の「ウェブ バージョンを表示」をタップしてウェブ バージョンに切り替えると、過去記事の検索などの機能が使えます。

2 件のコメント:

  1. 以前音楽記事をリクエストした者です。あの時は楽しい記事をありがとうございました!

    今回の宮古島ホテル需要の記事、音楽記事以来一番興味深い内容でした。

    お役所統計からの考察と違って、やはり好きが高じて独自調査した内容って格段に面白いです。

    でも、調査は疲れますよね。お酒飲んで回復してください!

    返信削除
    返信
    1. お久しぶりです。コメントありがとうございます。

      また、お褒めいただき重ねてお礼申し上げます。

      酒って、そんな、あの、知らない人が読んだら、呑べみたいじゃないですか・・・

      削除