2021年3月22日月曜日

竹富島リゾート開発問題 訴訟では反対派が勝訴



 竹富島コンドイ浜リゾート開発に関して、事業者側が、開発に反対する竹富島を守る会の代表を相手取って提訴した損害賠償等請求事件で、那覇地裁は、2月19日、請求を棄却する判決を言い渡しました。


 当ブログでは、この問題にかなり入れ込んでいて、以前にも大論文記事を書いたこともありますが、今回は、この裁判についてご紹介します。




 簡単に経過を説明します。

 竹富島のコンドイ浜に面した土地で、リゾートホテル建設計画があります。既に開発許可、建築確認が降りて、着工可能という状態です。

 竹富島の人達は、この計画に反対し抗議活動を行っていますが、そのために開設したホームページの記載内容が、開発事業者の社会的評価を低下させたとして、事業者側が、活動を行っている竹富島を守る会(法人ではなく任意団体)の会長(個人)を相手取って、2200万円の損害賠償、謝罪等を求める訴訟を提起したのものです。


 判決は、原告の訴えを退け、ホテル建設によって周辺海域のサンゴ礁に大きなストレスを与えるなどとする守る会の投稿内容について、当然に想定もしくは危惧されるもので、事業者の社会的評価を低下させるような印象を与えるとは解しがたい、などとその理由を述べています。

 なお、被告となった守る会会長は、計画に反対する島民を萎縮させるための不当訴訟だとして、反訴(訴訟中に被告が原告を訴えること)していましたが、こちらも棄却されました。





 訴訟社会のアメリカならいざ知らず、日本において、事業者が開発反対派を訴える例はそれほど多くありません。

 民事裁判は、喩え自分の主張が絶対に正しいと思っていても、それをきちんと裁判の場で主張立証しなければ、相手方の主張が通り敗訴してしまいます。

 特に本件では、裁判所が那覇にあるため、被告となった竹富島在住の守る会会長は、裁判の口頭弁論への出頭やら弁護士との打ち合わせやらで、飛行機に乗って那覇まで出向かなければならず、その負担は相当大きなものだったと思います。


 琉球新報(2月20日配信)によれば、

 判決後の会見で、守る会会長は「胸をなで下ろしている。ホテル建設の問題はあるので、今後どのように活動を進めるか島の皆さんと協議したい」と述べた。代理人弁護士は「勝訴判決と受け止めている。穏当、妥当な表現活動だと裁判所が明確にした意義は大きい」と強調した。事業者は本紙取材に「コメントは控える」とした。

 とのことでした。

 その後、期限までに事業者が控訴しなかったため、この判決は確定しました。



 当ブログが、この問題に入れ込んでいる理由は、地域の人達が、自分達の地域はどうあるべきかを考え、それに沿うように外部に働きかけを行っているからです。これは、他地域の範たり得るものだと思います。

 規模や文化が違うのであり得ないことですが、もし、宮古島でも、島の人達が島はどうあるべきかを考え、それに沿わないリゾート開発には一致して反対すれば、バブルなどということにはならなかったと思うのです。





 最後に、今回の問題とよく比較される、2012年に開業した「星のや竹富島」のケースについて触れておきます。
 このときも、島内外でリゾート開発反対の声が上がったのですが、ただ、これは今回の件とは違う事情がありました。


 約50年前、沖縄の本土復帰の頃、島の多くの土地が二束三文で売られました。

 星のやがあるこの土地も、当時内地の企業の手に渡り、その後、紆余曲折を経て島の企業が買い戻したものの、利用計画が決まらず金利負担だけが膨む中、買い戻し資金を借り入れた際土地に設定した抵当権が、外資系ファンドに譲渡されました。

 このファンドが抵当権を実行すれば、この土地が外資を含む島外者の手に渡り、島人が望まない開発が行われる可能性が高まります。土地所有者はそれを危惧し、星野リゾートに相談を持ちかけました。
 星野リゾートはそれに応えて、9億円をかけて抵当権の解除をしたとされます。

 星野リゾートが、資金回収のために計画したのが「星のや竹富島」なのです。


 小規模の民宿やゲストハウスしかなかった島に、初めてとなるリゾートホテルが、それも一気に50室(棟)も建設される計画に、当初は反対の声も強かったのですが、上記の事情に加え、星野社長が自ら、実際に何度も島に足を運び、島人と話し合ったことで融和に向かいました。

 
 星のやに泊まると、夕方、夕日の名所とされる西桟橋へシャトルバスが出ます。宿泊客は、夕日を眺めた後、集落内の食堂・居酒屋で夕食をとると、またバスが迎えに来てくれます。
 もちろん、星のやにはゴージャスなレストランがありますが、宿泊客が集落の店で飲食をするための便宜を図っているのです。

 「星野はこっちの言うことを全部聞いてくれた。島で星野のことを悪く言う奴はいない。」そう言い切る島人もいます。





 もし、コンドイ浜リゾートの事業者が、星野リゾートのように、島人と話し合いの場を持ったら、展開は変わったことでしょう。

 しかし事業者は、冒頭紹介した損害賠償請求訴訟など、話し合い路線ではなく、正面突破を試みました。
 
 建築工事自体は、まだ始まっていないようですが、予断は許しません。

 コロナでせいで竹富島の観光にも大きな影響が出ています。この判決を機に、事業者側が話し合い路線に転じるか、若しくは、計画そのものを見直すことを、期待したいところです。



 竹富島を守る会のFacebookページ、琉球新報、八重山毎日新聞を参照しました。

 竹富島のリゾート開発問題に関する当ブログの過去記事はこちら



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