2025年1月21日火曜日

沖縄で出会ったファンタスティックな人達 Ⅰ




 竹富島で出会った彼女は、スレンダーでちょっと見華奢で知的な印象でした。

 黒のパンツスーツを着て、東海道新幹線で日経新聞でも読んでそうなイメージです。
 ところが彼女は、32歳の若さにして、国内の主だった山を制覇し、海外の6千メートル級の山にも登ったことがあると聞いてびっくり。

 しかし、これはホンの前座にすぎず、自分には想像もつかない壮絶なキャリアの持ち主だったのです。


 沖縄で出会ったファンタスティックな人達。今回は、このテーマで書いていきます。




 彼女は、地方の進学校に通う高校生でした。

 母と姉との3人暮らしでしたが、姉は高校卒業と同時に都会に出て、以降は母と2人暮らしになります。

 程なくして、後に継父となる男性がしばしば家に遊びに来るようになります。十代の多感な少女はそのことに嫌気が差し、学校から帰宅後、居酒屋でバイトをする生活を始めました。

 高校生が居酒屋?と思いますが、本人は、田舎だから皆やってたと笑っていました。


 そして高校卒業後、就職も進学もせず、バイトで貯めた金で中古車を買って家を出ます。

 行く先々で仕事を探しながら、日本を一周するという、壮大なプランでした。

 仕事をして金が貯まったら次の場所に行くという生活を繰り返し、何と6年かけてゴールとなる北海道に辿り着いたといいます。

 6年間で1回だけ実家に帰ったそうです。場所によっては本当に仕事がなくて、食べるものがなかった、栄養失調になると目がかすんでくる、とは本人の談です。


 若い女の子がこんなことをしているわけですから、当然よからぬ考えで近寄ってくる人間もいたことでしょう。素敵な出会いもありましたが、面倒なこともあったようです。

 あまり詳しくは聞けませんでしたが、当時付き合っていた彼氏のこと、金のこと、地方独特の人間関係のこと、健康のことなど、様々な、という陳腐な言葉では語り尽くせないほどの経験をしたようです。

 危ない目に遭いかけたことも一度や二度ではなかったと思いますが、それでも彼女は、日本中に友達ができたと明るく語ります。


 日本一周を終え、一番役に立つ資格は看護師だと悟り、働きながら看護師の免許を取得します。

 その後も特定の病院に長く勤めることはなく、相変わらず宵越しの金は持たない的な生活をしていたそうです。

 看護師の資格があれば、何処でも就職できるけれど、一流と言われる病院はキャリアを重視するから、自分には無理だという話をしていました。


 その傍ら、慈善団体の医療チームに同行して海を渡り、ヒジャブを被らなければならない国や、シャワーが水滴程度にしか出てこない国で、ほぼボランティアの医療活動にも従事します。

 ある種の国では、宗教上の教義から女が酒を飲むことが許されず、1月以上勤めてから都市部にある外国人専用のバーに駆け込んで、久々に飲んだ酒がとても美味かったとか、食べるものがまったくなくなったとき、住民が木に登って椰子の実とバナナを採ってきてくれたといったエピソードも語ってくれました。




 知り合ったのは竹富島でした。この時も僅かな金と金券ショップで買った航空会社の株主優待券を握りしめた、予定のない旅の途中だとか。

 竹富島に来たのは、今まで車で日本を回ってきたから、今度は車で行けない島に行こうと思ったからだそうです。

 
 32歳の若さで、こんなに色々な経験をしたなんて俄には信じられないのですが、彼女から聞く話は、一つ一つがリアルであり具体的であって、受け入れざるを得ない迫力のようなものを感じるのです。

 一流大学卒とか海外留学経験などといった肩書きなど、彼女のキャリアに比べるとかすんでしまいそうです。

 柔軟な思考力、強靱な肉体と精神力、頑張りがあったからこそのある種の偉業です。

 華奢でスレンダーな外見なのに、何処にそんなパワーが潜んでいるのかと、驚くばかりです。




 一つ後悔していることがあります。「高校を卒業して家を出るときに、お母さんは反対しなかったの?」なんて不用意に聞いてしまったのです。

 「いってらっしゃい~と明るく送り出してくれたよ。」「いいお母さんだね。」


 本当に間抜けな会話をしてしまいました。

 高卒の女の子が、何故就職も進学もせず家を出たのか、その時の母と娘の気持ちはいかばりか、そのことにまったく想像力が及ばなかったのです。

 自分は彼女より年齢だけはずっと上ですが、まだまだ未熟者でした。





 沖縄に行って、民宿やゲストハウスに泊まると、年齢や性別、仕事や地域を越えて数多くの人と出会います。
 その中には、本当に凄い、ファンタスティックでマーベラスな生き方をしてきた人がいました。


 沖縄で出会っただけで、沖縄とはあまり関係ない話になるので、ブログ記事にするべきか悩んでいたのですが、やはり書くことにしました。

 今後も不定期で何回か続けていきたいと思います。




 アドレスを交換し、しばらくはメールのやり取りしていましたが、その後音信不通となってしまいました。

 スーパーキャリアウーマンは、今何処にいて、どんな人生を歩んでいるのでしょうか。

 

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2 件のコメント:

  1. こんにちは
    表題に更に惹かれて、一気に読み進みました。軽い言葉で感想を書くのも躊躇しますが、魅力的な彼女の人柄が伝わってきます。
    記事を読みながら沖縄の某離島のお店で働いていた若い女性を思い出しました。
    私の住んでいる街でも働いていたことがあると聞き、びっくりしましたが、色んな所を働きながら巡っているとのことでした。
    このシリーズのお話も楽しみにしています。tyuraでした

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    1. コメントありがとうございます。
      このシリーズは、ボチボチというペースになると思いますが、また読んでいただけると嬉しいです。

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