2021年2月14日日曜日

沖縄ではプライベートビーチに誰でも行ける



 「プライベートビーチ」って言葉になんか憧れませんか。


 日本では、海に所有権は認められませんから、本当の意味でのプライベートビーチはありませんが、沖縄の離島に行けば、ほかに誰もいない、まるでプライベートビーチ!な海を満喫することができます。

 しかし、私有地を通らないと行けないビーチの場合、そこは事実上のプライベートビーチになってしまいます。

 それをいいことに、商売をやられたら、なんか感じ悪いですよね。



 
 一般的に、公道に面しておらず、他人の土地を通らなければそこに行けない土地については、そこまでのルートを確保するため、法律上、通行権(地役権)が認められます。
 これは契約によって設定されたり、以前からそこを人が通っていれば、通路と認定されることもあります。

 しかし、海に続く道に関しては明確な規定がなく、ハッキリしません。


 と思っていたのですが・・・



 今までまったく知らなかったのですが、沖縄県には、全国で唯一の素晴らしい条例があったのです。

海浜を自由に使用するための条例(平成2年10月18日条例第22号)

 この条例は、①ビーチ周辺の土地所有者・事業者は、公衆が海に自由に行けるように配慮しなければならない、②そのために、海に行けるよう通路を確保し、通行料を取ってはならない、③県は必要な行政指導をし、助言・勧告ができ、④それに従わなかったら公表する、というものなのです。


 以下、条例の条文を一部引用しておきます。

事業者等の責務)
第6条 海浜及びその周辺地域において事業を営む者及び土地を所有する者(以下「事業者等」という。)は、公衆の海浜利用の自由を尊重し、公衆が海浜へ自由に立ち入ることができるよう配慮するとともに、県及び市町村が実施する海浜利用に関する施策に協力しなければならない。

(必要な措置の要請)
第8条 知事は、事業者等に対し、公衆の海浜への自由な立入りを確保するため、海浜への通路の確保等に関し必要な措置を講ずるよう求めることができる。
(助言、勧告等)
第9条 知事は、事業者等に対し、この条例の目的達成に必要な限度において、前条の規定による措置に関し報告若しくは資料の提出を求め、又は助言若しくは勧告をすることができる。
(公表)
第10条 知事は、前条の勧告をした場合において、その勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。


海浜を自由に使用するための条例施行規則

(事業者等の責務)
第2条 条例第6条に規定する事業者等が配慮すべき事項は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1) 公衆が海浜へ自由に立ち入ることができるよう適切な進入方法を確保すること。
(2) 公衆の海浜利用又は海浜への立入りの対価として料金を徴収しないこと。


 凄いですね。しかも、30年前から。皆さんご存じでした?





 宮古島から橋を渡っていく某島で、ビーチに行くには何とか保全協力金を払えという趣旨の看板を見たことがあります。
 多分、条例のことを知っていたから「協力金」という名目にしたのでしょうが、名目の如何に拘わらず料金を徴収することは条例違反です。


 宮古島の砂山ビーチに続く坂道は、私有地ですが、これを封鎖すると条例違反ということになります。土地所有者の恩恵というわけではなかったのです。
 ここには、「ビーチでの遊泳、釣り、観光目的以外の方の通行は認められません」という看板が立っていますが、条例を理解した上での措置だと思います。


 石垣島のマエサト海岸やフサキビーチは、ホテルが正面にドーンとありますが、誰でも自由に行くことができます。これは、ホテルの特別の計らいではなく、条例上の措置ということになります。


 恥ずかしながら、こんな条例があるなんて知りませんでした。しかも、30年前から。
 当ブログの過去記事も、知っていたら書きっぷりが変わっていただろうというものも、いくつかあります。

 沖縄県やりますなあ。ちょっと見直しました。

 



 ただし、土地所有者が条例に従わない場合、県は、そのことを公表することができますが、それ以上の罰則はありません。
 条例があるからといって、我々が強行突破することも許されません。
 また、通行料を取ってはならないのは通路だけで、駐車場などは別です。

 言うまでもないことですが、他人の土地を通行するのですから、こちらも節度ある振る舞いが必要です。


 それでも、条例を知っているのと知らないのとでは大違いです。万が一、ウチの土地を通って海に行きたければ金を払えと言われた場合は、それは県条例違反だと堂々と指摘することができます。
 
 
 また、先ほど、日本では、海に所有権は認められと書きましたが、正確には、「春分及び秋分の満潮時において海面下に没する土地については、私人の所有権は認められない」とするのが国の公式見解です。
 簡単に言えば、台風とかでなくても波に浸かることのある砂浜部分は、全て国有地だということです。

 これも知っておくと役に立つ知識だと思います。





 最後に、条例には、こんな条文もあります。
 
(海浜利用者の責務)
第7条 海浜を利用する者は、海浜がかけがえのない遺産であり、後代に継承すべきものであることにかんがみ、その適正な保全が図られるよう秩序ある利用に努めなければならない。

 ゴミを捨てない、珊瑚を荒らさない、危険な海で泳がないなどの当たり前のことを、この際お互いに再認識しましょう。





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