前回に引き続き、「石垣市地域公共交通計画」から興味深い内容をご紹介します。2回目は、島人編です。
報告書の中から、「石垣市の公共の現状等」の一部の気になるデータをピックアップします。
なお、石垣島の公共交通は、離島航路とバス路線がありますが、今回はバスに着目しました。
石垣市内のバス路線網の概要
石垣空港と中心市街地を結ぶルート(空港~白保~宮良~大浜~港)は、1日100便以上(コロナ前)と利便性の高い区間となっています。
一方、島の中央部、西北部では、1日1~10便程度の路線が多く、利便性の低い区間となっています。
総人口に占めるバス圏域(1便でも通る)内の人口は 79.1%で、残りはバスでカバーされていない空白地域となっています。
主な路線バスの利用内訳
住民 観光客(日本) 観光客(外国)
4系統(市街地経由空港線) 66.4% 16.8% 16.8%
10系統(ホテル経由空港線)29.1% 59.2% 11.7%
9系統(川平リゾート線) 14.7% 64.7% 17.6%
5系統(空港経由平野線) 46.8% 17.0% 36.2%
注:5系統には・6系統(空港・平野経由伊原間線)を含む。
なお、令和2年2月の調査で、観光客の割合が少ない時期の調査です。
そしていきなり佳境に入っちゃうのですが、以下、想像以上に凄い結果です。
住民のバス利用頻度
全く利用しないが59.3%、年に1回~3回が、12.6%、月1回未満~1回程度が12.6%。逆にほぼ毎日利用する人は0.5%なのです。(無回答が13.5%)
いや~ ある程度予想はしていましたが、ここまでとは!
それならば、自転車はどうかというと・・・
住民の自転車利用頻度
利用しない65.6%、ほぼ利用しないが9.5%でした。(無回答が14.7%)
ですよね~
そうすると、こちらの結果も目に浮かぶようですが・・・
住民の徒歩での外出頻度
しないが25.3%、ほぼしないも24.4%。
マジかぁぁぁぁ~!
逆に毎日は4%、週5~6回が5.3%、週3~4回が6.3%、週1~2回がかろうじて16.3%となっていました。(無回答が17.7%)
どの程度歩くと徒歩移動とするのか説明はありませんが、島人は、50メートル先まで行くのにタクシーを使うかどうか真剣に考える、というのはあながちジョークではないのかも。
こうなると、車利用は推して知るべしですが、
住民の自動車(運転)の利用頻度
毎日が46.3%、週5~6回が16.3%で、これだけでも既に3分の2弱となりますが、運転しない人も13.3%いました。(無回答が12.3%)
住民の自動車(同乗)の利用頻度
利用しない、ほぼ利用しないが合わせて43%である一方、毎日利用から週1回以上利用を合わせると36.9%に上りました。(無回答が20%)
同乗というのは、詳しい説明はありませんでしたが、施設等の送迎車(バス)とタクシー利用が主だと思われます。
以上の総括となる交通分担率をみると、
住民の交通手段分担率
自動車(運転)77%、自動車(同乗)6%、徒歩6%、バス1%などとなっていました。
ということは・・・
もしお暇ならば、この計画本体に、ザッとでも目を通してみると面白いと思うのですが、結論はバスを中心にした公共交通を地域で支える、ということになっています。
しかしながら、具体的な取組策としては、
・ バスの利用実態や取り組みについての周知・広報
・ 地域で主体的にバスに関われる検討組織の立ち上げ
・ バスのメリットを伝えるための情報提供
・ 利便性が低い地域の人たちが利用しやすい環境にするための検討
・ 小・中学校の頃からバスに慣れ親しんでもらうための検討
・ 気軽に利用できるバスのサブスクリプション(定額料金支払い)の検討
といった、全然具体的でない対策しか挙がっていないのです
ということは、つまり手詰まりだということですよね。
まあまあバス路線網が充実している石垣島でさえこうなのだから、宮古島ではもう言わずもがなでしょう。
島人は、バスに乗るどころか、歩くことすらもしない、超車社会の中で暮らしているのです。
その人達に向かって、バスのメリットをどう伝えたところで、「じゃあ、乗ってやるから、バス停までのタクシー代をタダにしてくれ」、という話にしかならないように思います。
確かに、島では、道路が渋滞するとか、駐車場がないなどといった、車の運転がストレスになるような要素が少なく、逆に、夏の暑さや急なスコールなど、徒歩移動がストレスになる要素が多いです。
最繁忙期であっても、他県から流入する車がない、つまり車の台数が増えないという、島特有の事情もあります。
石垣島は空港が遠いので、港・空港間の需要で、かろうじてバス路線が維持されているといったところでしょうか。
車を運転しない観光客対策としては
そもそもは、Z世代観光客が車を運転しない問題から、島の公共交通の現状を調べてみたものです。
しかし、バスは、住民の足としては僅か1%程度しか担っていない状況からすれば、空港線以外は、いつ廃止されても不思議ではないという現実がありました。
そうなると、バスを使わない住民のために、行政が補助金をつぎ込んで路線を維持するよりも、観光地やビーチを巡る路線など、観光客の利便性を中心にバス路線網を再構築した方が、トータルで考えて、島経済のためにはいいような気がするのですが、いかがでしょうか。
2回に渡って、「石垣市地域公共交通計画」の内容を紹介しましたが、運転免許がなければ住むにも遊びに行くにも不便な場所だという、頭の中では分かっていたはずの現実を、改めてデータで示されたという結果になってしまいました。
もちろん、宮古島周辺や慶良間諸島でも事情は全く同じだと思います。
⇦ その1へ
※ 計画書の全文はこちら。
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