安全に海遊びを楽しむために。前回は、業者選びについて、今回は、我々自身が気を付けるべき問題について考えてみました。
安全に海遊びを楽しむためには、ひと言で言えば、海を甘く見てはいけない、ということなのですが、正直に言うと自分も甘く見ていました。
というより、よく分からなかったのです。
子供の頃から海で泳いでいた、学校で水泳を教わったし、そこそこ泳げるという人は多いでしょう。そんなノリで、沖縄に行って簡単にシュノーケリングを始めてしまう、自分はまさにその典型でした。
安全な海遊びのために注意する点は沢山ありますが、全ては書き切れないので、特に重要だと思う、シュノーケリングをする時何を身に着けて泳ぐのか、健康状態はどうか、という点に絞って考えたいと思います。
シュノーケリング(スノーケリング=Snorkeling)とは、先端が海の上に出るsnorkel(筒)をくわえて呼吸をしながら泳ぐことです。併せて、マスクを顔に装着するので、息継ぎをすることなく珊瑚やカメや熱帯魚を眺めながら、長時間海中に居られます。
海で何を着て泳ぐのかといえば、「水着に決まってるだろ」と言われそうですが、実際には、水着の上にさらに色々着込んで泳いでいる人も多いです。
シュノーケリングの場合は、一般的にも、ウエットスーツやラッシュガード着用が推奨されています。岩や珊瑚にぶつかって怪我をしないため、クラゲなどの危険生物に接触しないためです。
ただ、ここで言いたいのは、着込めばいいというものではない、TPOを考えて欲しいということなのです。TPOとは、time=時間・placa=場所・occastion=場面です。
まず、想像していただきたいのは、そんなに着て泳げますか?ということです。
シュノーケリングをしているときは、泳ぐ=水泳をするという意識はあまりないと思います。息継ぎの必要もなく、フィンを使ってバチャバチャしていれば、行きたい方向に進めます。
ですが、珊瑚に夢中になっている間に潮に流されて、気が付いたらとんでもない所にいたというときはどうしますか。
さらには、フィンが壊れた、マスクが壊れた、足が攣ったという事故もあり得ます。
そんな時は、自力で何とか岸までたどり着かなければならないのです。
ガイドが付いて入れば、万一の時でもライフジャケットをきちんと装着していれば、つまり浮いてさえいれば救出してもらえます。
しかし、個人で泳いでいるときは、そうはいきません。同行者と一緒だったとしても、普通の装備では溺れている人を助けることはできません。
むしろ、同行者まで道連れになってしまうので、岸に戻って、助けを求めることぐらいしか出来ないのです。
見ていていつも心配になるのですが、スパッツにショートパンツ、上は長袖ラッシュまで着込んだような人が、浮き輪に捕まりながら、泳いでいることです。
浮き輪に捕まっているのは、泳ぎに自信がないからだと思いますが、波の力は思ったより強く、ちょっと油断をしていると、浮き輪など簡単に流されてしまいます。
この記事を書くに当たってネットで知ったのですが、穏やかな時でも、およそ100回に1回の割合で、突然1.5倍くらいの高波が来るそうです。
パーカーを着てフードを頭から被って、その上からマスクを装着している人も時々見かけます。そうすれば、頭も首筋も日焼けしなくて済むからでしょう。
しかし、泳いでいる時は、頭はかなり動きます。この状態ではマスクのベルトはフードに引っ張られて負荷がかかります。
シュノーケリングの最中に、マスクがずれたり壊れたりなんて想像できますか。
デカTシャツもよろしくありません。
海中では、ちょっとした波でまくれ上がります。そうなると意味がないどころか、足手まといにもなるのです。
着るときは、なるべく自分の体にフィットするサイズの物を選んでください。
海中で一番怪我をしやすい場所は、手です。
全身を衣服で覆っていながら、素手という人も多いのですが、頭隠して何とやら。
軍手でも構いませんが、今時百均でもそこそこおしゃれなグローブを売っていますので、予め用意してください。
さらに言えば、ウエットスーツですら万能ではないのです。
ウエットスーツは、全身を覆い、フィットして泳ぎやすいのですが、一番の特徴は保温性です。逆に言えば、水温が高い場所では体温が上昇し、結果、脱水症状になる恐れもあるのです。
泳ぎやすさを考えるならば、水着以外に余計なものを着るべきではありません。しかし、海中ではできるだけ素肌をさらさない方が安心です。
両者は矛盾する関係にあります。だからこそ、TPOを考えて欲しいのです。
ちなみに自分は、シュノーケリング中にマスクのベルトが壊れた経験があります。
マスクは、強い力で顔に張り付いているので、ベルトが切れても数秒間は顔に張りついたままです。
ベルトで圧迫されていた後頭部が、急にす~っと楽になるので、その瞬間に気が付いて手でマスクを押さえれば、緊急措置としては何とかなります。
また、フィンが壊れたこともあります。フィンは、片方壊れただけで、前に進むことが非常に難しくなります。
以来、道具に亀裂やヒビがないか、事前のチェックは欠かしていません。
(この人は、人魚級の達人です。それでもフィンは50㎝程度です。)
その一方、近年では、SNS用に映える写真を撮るためか、ダイビング用の40インチ(約1メートル)程のロングフィンを装着し、ビキニの水着だけで珊瑚の海を素潜りする女子を少なからず見ます。
これは、かっこいいと思います。ウエットスーツを着ているより、水着だけで潜っている方が遙かに見栄えがするし、写真をアップすれば「いいね!」の数も段違いだと思います。
写真を撮る側としても、それはとてもよく分かります。
ロングフィンは、推進力が強く、一かき二かきで、あっという間に2~3メートル潜れたりします。バタバタしないでも、海中で優雅に泳ぐことができます。
しかしその分、体に負担がかかるわけで、慣れない人がいきなりそんなことをするのはとても危険です。
3メートルも潜れば水圧も急に増すし、水温も条件によっては海面と5℃近く違うこともあります。
それだけではなく、ロングフィンは強い水流を起こすので、珊瑚や海の生き物に悪影響を与えることもあります。人に当たると怪我をさせることにもなりかねません。
1メートルのフィンを着けているということは、足のつま先のさらに70~80㎝先に凶器があるということです。この感覚を掴むまでに経験が必要です。
実際そういう写真をアップしている人達は、十分な経験とスキルがあってやっているのだと思いますが、「自分もやってみたい、ロングフィンが欲しい」と、いとも簡単に言う女の人が多いような気がしてちょっと心配になります。
ロングフィンさえあれば、誰でもできる訳ではありません。経験者に付いてスキルを身につけてからにしてください。
最初のうちは、海面近くに浮いているだけにするか、ウエットスーツ着用が無難かと思います。
次に、自分の健康状態をチェックしてください。
シュノーケリングをする、すなわち、水中でsnorkel(筒)をくわえて呼吸をしながら水圧を受けて泳ぐことは、陸上とは違う特殊な環境で運動をすることです。
ですから、心疾患、脳梗塞、脳出血、動脈瘤、動脈硬化などの循環器系の疾患は、シュノーケリング(もちろんダイビングも)にとってリスクが高いそうです。
水圧に加えて、温度低下による血管の緊張によって、予期せぬ事故が起こりやすいからです。
一般には、高齢者は要注意と思われがちですが、必ずしも年齢とは関係ないそうです。
自分ではそんな疾患はないと思っていても、きちんとした診断が下されていないだけかも知れません。
オレはまだ若い!と思っていても、日頃運動不足だったり、メタボ気味で高血圧の人などは、過信しない方がいいと思います。
体力があるか、水泳が出来るかではなく、水圧を受けながら運動できるか、水温変化に適応できるかの問題ですから。
三半規管、耳、副鼻腔等などに問題がある人も、水圧の影響を受けて何らかのトラブルを生じる可能性があるので要注意です。
しかし、これらの疾患がある人や怪しい人は、シュノーケリングを諦めなければならないというのはちょっと寂しいですよね。
その場合は、専門家であるマリンショップや医師に相談することです。
まずは、ショップに連絡して事情を話してみてください。ショップによっては、面倒な客は断るところもありますが、親身になってガイドを受けてくれるショップもあるかも知れません。
海中に潜らず浮いているだけなら大丈夫とか、こまめに休憩を挟めば大丈夫などと提案してもらえるかも知れません。
その際、医師の診断書を求められることもあるかと思いますので、近くの内科医に行って、「(こういう条件ならば)シュノーケリングをしても問題がない」旨の診断書をもらってください。
何処でも書いてもらえるはずですが、文書料を取られるので、無駄が生じないよう窓口でよく聞いてみてください。
ただ、医師がシュノーケリングというものをよく知らない場合もあるので、何を診断し証明するかを具体的に明示しなければばりません。
そのためには、どのような診断事項があればいいのか、事前にショップと打ち合わせておく必要があります。
ダイビング用には、PADI(パディ:Professional Association of Diving Instructors)の様式が ありますが、そこまでは必要ないはずなので、業者間で調整して、シュノーケリング用診断書のひな形を示してくれるとありがたいのですが。
その他、当日の体調不良にも注意してください。
熱があったり、咳き込んだりしていてもシュノーケリングをしようという人はいないと思いますが、沖縄あるあるは、二日酔いです。
snorkel(筒)をくわえて海中にいる状態で、もしも、オエッということにでもなれば、それはとても危険です。
繰り返しになりますが、体力があるか、水泳が出来るかではなく、水圧を受けながら運動できるか、目に見えない潮の流れ、波、水温変化に適応できるかという問題ですので、ご理解ください。
もう20年以上前の話になるのですが、自分が始めて石垣島に行ったとき、レンタカー屋が「泳ぐならば米原海岸がお勧め」と言って、道具を無料で貸してくれました。
そして、米原海岸に着いて、皆がやっているのを見様見真似でシュノーケリングなるものをやってみたら、足の着くような浅瀬なのに、珊瑚も熱帯魚もうじゃうじゃいてもう感激で、そんなこともあって、自分は沖縄離島にはまりました。
しかし、その頃は、シュノーケリングクリアも出来ず、というか、そのこと自体知らなかったのです。
今考えると、ゾッとしますよね。
最近は、ネット、ガイド本、現場の案内看板などでも、安全に泳ぐための注意点が書かれていることが多くなりました。
しかし、アレをしてはいけない、コレをしなければダメだと列記するだけでは、頭の中が既にシュノーケリングモードになっている人達には説教くさく感じられ、自分には関係ないと素通りされてしまいがちです。
それで、今回は、敢えて詳しく具体的に書いてみました。前回記事と併せて、長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。
万一海で怖い目に遭ったら、楽しかった沖縄旅行は一気に台無しです。一方、沖縄の海は本当に魅力的で、ダイビングをしなくても、珊瑚や熱帯魚と戯れることができる場所が沢山あります。
だとすれば、安全に気を付けて、楽しく沖縄の海を満喫すればいいと思いませんか。
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