2022年4月16日土曜日

絶滅危惧酒も!泡盛界の2032年問題

 
 とうとう終わりの日がやって来ます。

 50年間ぬるま湯に浸かっていた業界に、ついに王手がかかりました。このままでは、希少なアノ酒が絶滅危機酒となるかも知れません。

 泡盛業界を襲う2032年問題とは。




 泡盛業界の2032年問題とは、沖縄県における酒税の軽減税率適用が、あと10年で終わるという問題です。

 酒税の税率区分は、もの凄く細かいのですが、単式蒸留焼酎(旧乙類焼酎)の一種である泡盛には、本来、キロリットル当たり、25万円(25度)~44万円(45度未満)が課税されます。

 しかし、沖縄県産の泡盛には軽減税率が適用され、これより35%(オリオンビールは20%)安い税率になっています。

 一升瓶当たりでは、190円ほど安くなります。


 何故そうなったのかというと、遡ること今から50年前。

 1972年の沖縄返還の際、それまでアメリカ流の安い税率が適用されていた沖縄県産の酒類について、激変緩和のための特例措置として、5年間に限り軽減税率が適用されることになりました。

 その後、軽減率は多少上下したものの、5年ごとに延長が繰り返され、いつの間にか50年が経ってしまいました。


 2000年頃には、見直しがされそうになったこともありますが、基地対策など、本来酒とは関係のない政治問題により、さらに継続されます。

 「特例」のはずが、既に10回も延長され、2017年からは、5年間を2年間に短縮しながらも延長が繰り返されてきました。


 しかし、沖縄だけ優遇というのでは不公平感がぬぐえず、また、却って業界の自立の妨げになっているとの声も根強くありました。

 今年は、本土復帰50周年でもあり、復帰当時の特例はいくら何でももう終わりにすべきだという機運が高まり、泡盛業界もさすがにこれ以上の延長は難しいと考えたらしく、段階的な軽減廃止もやむなしとなりました。




 それでも、最終的に軽減税率が撤廃されるのは、今から10年も先の2032年です。

 それまでは経過措置が講じられ、泡盛に関しては、県内出荷量に応じて酒造所を「大規模」「中規模」「小規模」の三つに分類し、

 2024年から、大規模酒造所の場合は軽減率を35%から25%に、中規模酒造所は30%にするなど段階的に軽減率を引き下げ、2032年に廃止する、

 小規模については現行措置を当面維持し、2032年に一気に全廃する、

 ことが、政府・与党の税制調査会で決定されたとのこと。



 泡盛の酒造所は、現在46社。うち34社が小規模に分類される零細企業で、そのほとんどは、家内工業です。

 事業主の高齢化や後継者不足は深刻で、かつて、宮古島にあった千代泉酒造が2018年に廃業しましたが、理由は後継者が見つからなかったことでした。

 その上、税率が上がれば、経営体力のある大手や、内地の焼酎メーカーとの競争に勝つのは厳しく、このまま消えてしまう銘柄も少なくなさそうです。
 

 琉球新報によれば、酒造組合の幹部が、「今後10年間が、沖縄の酒造所の経営基盤強化に向けて重要な時期となる。廃止まで長いようで短い10年。対策は待ったなしだ。」と語ったとか。





 さて、業界が考えているというその対策ですが、報道によれば、県外や海外に販路を広げるため、おしゃれなボトルの開発やPRに努めるのだとか。

 また、沖縄県内でも、若者の泡盛離れが進んでいるようなので、その対策として、若者にターゲットを絞り、大学生向けの試飲イベントを行ったり、泡盛カクテルの普及を企画しているそうです。

 ん~~~、なんか方向が間違っていると思いませんか。


 以前、大手日本酒メーカーが、若い女性を対象にアンケートを採ったところ、「ヘルシーな日本酒を望む」という回答が多かったので、糖質オフ、アルコール度数控えめの新商品を開発したところ、見事に転けたという話がありました。

 そりゃそうでしょう。

 酒の味も分からん若造に(失礼!)、「どうしたら日本酒飲んでくれますか」と媚びるのではなく、酒にうるさいオヤジを黙らせるような銘酒を造るべきであり、それを見て日本酒を飲んだことがない若い者が、そんなに旨いならと、食いつくのではないでしょうか。


 泡盛だって、同じでしょ。

 ボトルが素敵だからっといって買う層は、ホンの僅か。

 カクテルとて、泡盛の良さを活かしたオリジナルなカクテルを開発するならともかく、取り敢えず、甘くして飲みやすくするだけじゃ売上げは伸びませんよ。

 そんなことをしているヒマがあるならば、旨い泡盛を製造するための技術革新に、人も金もつぎ込むべきだと思いませんか。





 さて、ここから先は、自分の思い入れです。


 世の中の酒好きには、味にうるさいこだわり派と、正直酔っ払えれば何でもいい派がいます。
 もちろん、その中間派もボーダレスでいるわけですが。

 酒税の軽減は、沖縄において、酔っ払えれば何でもいい派には有り難い制度でした。

 でも、安い酒を提供するからドンドン飲んでくれというのは、健康という面からしても国策としてはよろしくないわけで、旨い酒を味わって飲む方向に誘導した方がいいと思うのですよ。

 ということは、酒税を安くするのは逆方向でしょう。世の中、酒税とたばこ税に限っては、増税して良いという声も少なくないですから。

 なので、国は、酒造メーカーが、多少高くても買いたくなる旨い泡盛を造る方向に誘導すべきです。そのためには、軽減税率の撤廃は正しいと思います。

 それは、酒造メーカーにとって、口で言うほど簡単なことではないかも知れません。でも、泡盛には、熟成して古酒になるという、他の酒にはない素晴らしいポテンシャルがあります。


 酒造組合のHPによれば、
 ウイスキーなどの洋酒は、樽に貯蔵され、樽からバニラの香りやスモーキーな香りなどのさまざまな成分をもらって熟成するので、樽から出して瓶詰めすると古酒化はそれ以上進まない。

 一方の泡盛は、泡盛に含まれる成分(アルコール類各種・脂肪酸(有機酸)・脂肪酸エステル・硫黄系化合物・フェノール化合物 ・アセトアルデヒドなどなど)そのものが、物理的変化、化学的変化を経て香味成分などに変化し、まろやかな口当たりと甘い香りを醸し出すとのこと。

 つまり、泡盛は、自らの成分そのものを変化させて古酒になっていくので、瓶詰めした後でも古酒化が進むのです。
 もっと言えば、瓶詰めして製品化した後、勝手に泡盛が熟成して旨くなっちゃうのです。

 それも、日本酒やワインのように厳格な温度管理は必要ありません。直射日光や高温を避ければ、結構てーげーに扱っても大丈夫なんです。


 凄いじゃないですか。

 ウイスキーから苦情が来たり、ブランデーが弟子にしてくれと頭を下げたり、日本酒から泡盛の不買運動を起こされたり、ワインが泣き出すくらい凄いと思うのです。

 だったら、これを活かさない手はないと思いませんか。




 この件に関しては、ちょっとした思い出があります。

 以前、宮古島の某ペンションで、開業20周年ということで、20年前に買っておいた、菊の露とニコニコ太郎を、口開けして飲ませてもらったのです。

 どっちがどっちだったかは忘れましたが、片方は、まろやかだけれど濃厚な口当たり、もう一方は、刺激のないさっぱりした口当たりでしたが、喉ごしの時に「うぉぉ~」な刺激が。

 新酒の一升瓶を買って、20年間置いておいただけなのですが、二つの酒は、全く別物に進化していました。
 


 泡盛が熟成するということは、昔から経験的に知られていて、戦前は、50年物とか100年物とか、とんでもない泡盛があったそうです。
 それらは、大部分が戦火で焼失したということです。何とももったいない。


 戦後、泡盛造りも効率化が進み、大量生産大量消費の流れへと向かい、昔ほど古酒を有り難がる風潮が薄れてきたのだとか。

 その原因の一端が、内地より酒税が安かったことであれば、むしろ残念な結果を招いてしまったと思います。


 この50年間、内地では、日本酒にせよ焼酎にせよ、技術革新が行われてきました。今我々は、徳川家康も福沢諭吉も飲んだことのないような、旨い酒を飲んでいるのだそうです。

 
 ちょうどいい機会です。

 軽減税率廃止で、従来酒が淘汰されるのはある程度やむを得ないと腹をくくり、より商品価値の高い泡盛を追究していただきたい。

 そのために、熟成成分をより多く含む製法の開発とか、熟成が進みやすい容器の開発、熟成が早く進む保存方法の開発に力を入れ、泡盛のポテンシャルを最大限に発揮してもらいましょう。
 

 ボトルなんてダサくても、旨い酒にはそのダサさが却っていいのです。

 PRですか。キャッチコピーは、

 「成長する酒 泡盛」
 「自分を磨く酒 泡盛」
 「自ら歴史を刻む酒 泡盛」
 「お客さんが育てる酒 泡盛」

 なんて、いくらでも思いつくじゃないですか。


 オークションで高値で転売されたら困りますよね。

 転売ヤーに買い占められないよう、通販はせず、現地での対面販売だけにしましょう。
 現地でしか買えないとなると、益々欲しくなるのが人情というものです。
 売り切れると大変だから、販売は一人1本に限定しましょうか。

 むしろ、宣伝は控えた方がいいかも知れませんね。今は、ネットでドンドン情報が拡散されますから。




 後10年、楽しみに待ちます。

 それまで、飲み過ぎてドクターストップにならないよう、十分に気を付けますので、是非共、沖縄ならではの旨い酒を造ってくださいませ。



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