日焼け止めって珊瑚に良くないの?
という質問をいただきました。
これは、イエス・ノーで簡単に答えられる問題ではなく、また、自分も興味があったので色々調べてみました。
今回は、沖縄の珊瑚と日焼け止めの関係についてです。
日焼け止めとは
超大雑把に言うと、日焼け止めは、紫外線が肌に届かないようにする成分、つまり日焼け止め本体と、それを肌にくっつけておく接着剤成分からできています。
日焼け止め本体は、紫外線を吸収し変質させる紫外線吸収剤と、紫外線を反射する紫外線散乱剤とがあります。
近年、テカらない、白残りしないということで、紫外線吸収剤が使われることが多くなり、また、その効果を高めるため、ナノ化(極小化)が進んでいました。
何が問題なのか
実は、この紫外線吸収剤の一部が、珊瑚の生育に悪影響を及ぼすのではないかと指摘されているのです。
2008年にイタリアの研究者が行った実験では、特定の成分を含む微量の日焼け止めを投入した水槽で珊瑚を飼育したところ、白化が進んだという結果が公表されています。
これは、限られた条件下であるため、自然界で本当に悪影響があるのか、異なる見解もあるそうです。
ただ、間違いなく言えることは、日焼け止めは珊瑚の生育に悪影響を及ぼす可能性を否定できなかったということです。
つまり、人が日焼け止めを体に塗って海で泳ぐことが、珊瑚の白化の一因となっている可能性があるということなのです。
そのため、ハワイ州、パラオ共和国など外国の一部では、紫外線吸収剤のうち、
オキシベンゾン
オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルエキシル)
という成分を含む日焼け止めの販売や使用が禁止されています。
なお、日本では、これらの成分は、日焼け止めを含む化粧品に使用することが認められています。
日焼け止めは塗らない方がいいのか
日焼け止めの中でも、紫外線散乱剤を使用した製品は、今のところ大丈夫だと言われています。紫外線散乱剤の代表的な成分は、酸化亜鉛、酸化チタンといったものです。
これらは、無機物ですが、珊瑚に対しても人に対しても安全な物質とされています。
成分表示を見て、オキシベンゾン・オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルエキシル)を含まず、酸化亜鉛、酸化チタンを含むものであれば、一応安心ということです。
紫外線吸収剤を含まない日焼け止めは「ノンケミカル non-chemical」「吸収剤不使用」などと表示されます。
ノンケミカルというのは、オキシベンゾン等が化学的に合成された物質なのに対し、酸化亜鉛等は天然鉱物から採取可能だからです。
できれば、紫外線散乱剤でもナノ化していない、「non-nano」の表示がある方がいいそうです。
ナノ化は、新しい技術なので、自然界への影響が分かっていないからです。
夏の沖縄で、日焼け止めを塗らずに屋外で遊ぶことは自殺行為なので、適切に日焼け止めを使用してください。
オーガニック神話も
ググってみると、「珊瑚に優しいオーガニック日焼け止め」といった商品が、ドサッと出てきます。
オーガニックと聞けば、いかにも自然に優しい良いイメージですよね。
しかし、こういった商品は、ドラッグストアで市販されている一般の日焼け止めと比べて、かなり高価なものが多いのです。
人間の肌にとってどうなのかは分かりませんが、珊瑚のために高価なオーガニック製品が必要だとするエビデンスは、今のところありません。
また、酸化亜鉛、酸化チタンは、無機物であり、一般にいうオーガニック(有機)ではありません。
接着剤がオーガニックでも、日焼け止め本体は無機物であれば、オーガニックという表示でいいのか疑問が涌きます。
もしかしたら、ノンケミカルという用語と、オーガニックという用語が、混同されて使われているかも知れません。
オーガニック表示の製品で、紫外線吸収剤を使用しているものは、よもやないと思いますが、珊瑚への影響に関しては、オーガニックは、十分条件であって、必要条件ではないということです。
必要条件は、ノンケミカルです。
オーガニックは良さげだけど、高いから普通の日焼け止めでいいや、と思っている人は、是非、ノンケミカルで探してみてください。
大手メーカーでも、ノンケミカル商品を出しているところがあり、価格も他の製品と大きく変わらないものがあります。
一方、「珊瑚に有害な成分を一切含まない」と謳った商品もありましたが、これも「現時点で分かっている限りは」という注釈が付くので注意してください。
珊瑚と日焼け止めの関係は、まだ解明されていないことが多いそうです。
さらに、ネット上には、
海が大好きで、いままで日焼け止めをたっぷり塗って泳いでいました
⇩
その日焼け止めが、珊瑚に悪いと聞いてショックでした
⇩
それで調べてみたら、安心な製品があったので、皆さんにもお勧めします
という流れで、マジメな話かと思って読み進めてみたら、実は特定の商品に誘導するステマ広告だった、なんていうのもありましたので気を付けてください。
私たちはどうすればいいのか
取り敢えずできることは、成分が何であれ、海に流さないことです。
日焼け止めはウォータープルーフ(耐水性)のものを選び、丁寧に肌に塗り込んで安定させてください。
ヌルヌルベタベタしている間は、海に入らないように。
時々ビーチで、日焼け止めを、お好み焼きのマヨネーズのようにたっぷり塗っている人を見かけますが、これは日焼け対策としても過剰です。
そして、海で泳ぐときには、高価なオーガニック日焼け止めでなくて構いませんから、ノンケミカルの製品を使うと、よりベターです。
泳がない日は、紫外線吸収剤の日焼け止めでも問題ありません。ちょっと足を海に漬ける程度ならば、そんなに神経質にならなくても大丈夫です。
テカる日焼け止めはちょっと、という人も、遊び方によって上手く使い分けてください。
※
製品には、必ず成分の表示がありますが、非常に小さな文字でカタカナの成分が羅列されているので、ノンケミカルなどの表示を目安にする方が楽です。
あらかじめ、ノンケミカルの製品名をネットで調べておくのもいいと思います。
もう一点大事なのは、自然界の敵は日焼け止めだけではないということです。
例えば、中身の残っているペットボトルが、風で海に飛んで行ってしまったとしたら、プラゴミ+飲料の流失で、日焼け止めをオーガニックにしたことが帳消しになってしまうかも知れません。
要は、海に余計なものは一切捨てない、流さないということです。日焼け止めには徹底的に拘ったけれど、「足腰を鍛え鍛えてがんで死に」みたいなことにならないように。
そもそも、本来海にいない人間が海に入らないことが一番なはずです。
でも、それではつまらないので、「なるべく迷惑をかけないようにしますから、遊ばせてください。」というくらいの謙虚な気持ちで行きましょう。お互いに。
興味深い内容でじっくり読ませて頂きました。
返信削除日焼け止めが珊瑚にも他の海の生物にも有害と宮古島で話してました。ラッシュガードを着て出来るだけ、日焼け止めを塗る面積を少なくするのがいいねと話してました。私が使っていた日焼け止めはノンケミカルで…ホッとしました😌
宮古島でご一緒した美加子です
コメントありがとうございます。
返信削除その節はお世話になりました。
ノンケミカル製品は、テカる、白残りするなどで、好まれない面もあるので、大手メーカーが、使いやすい製品を作ってくれればいいと思うのですが。