2019年7月28日日曜日

宮古島の謎の神事 スマフサラ(島腐らし)




 ぶら下がっているのは、なんと豚の骨。
 その下を、何事もなかったように車が通過します。


 東洋一のビーチと言われる宮古島の前浜。
 その前浜がある、与那覇地区で、まだ台風5号の強風が治まり切らない7月19日、スマフサラが行われました。

 スマフサラは、豚の骨を道路に吊して、集落内へ疫病や悪霊が進入するのを防ぐという神事です。
 



 当日朝 、地区の役員、長老達が公民館に参集し、準備が始まります。

 用意された豚が、定められた手順どおりに解体され・・・

 あれっ?始まったのは、何故か料理。


 煮えたぎった大鍋に、豚骨が豪快にぶち込まれます。豚骨スープ、とは言わず、ワープニ汁と呼びます。ワープニとは豚の骨のこと。 

 豚骨だけではなく、顔(チラガー)も、豚足(テビチ)も、肉を取り除いたすべての部位が鍋の中に。





 こちらは、豚肉の血イリチー。豚肉と豚の血の炒め物。

 豚の血には、ミネラルが豊富に含まれています。沖縄の伝統料理ですが、グロテスクなためか、最近は、作られることが少ないそうです。

 一切れ味見させてもらった、焼きたての血イリチーは、結構旨かったのですが。





 
 料理が終わり、昼過ぎがら、豚の骨の吊るし作業が始まります。

 与那覇の集落のうち「結界」とされる14箇所に、順次柱を立て、豚の骨を吊す作業を行います。



 豚の骨を結んだ縄を、ギンネムの木の枝を支柱にして吊します。そういうしきたりだそうです。

 ですが、よく見ていると、片側がギンネムの木であれば、もう一方は何でもいいみたい。電柱でも、そのほかの木でも、使えるものは使っています。




 縄を結ぶ手捌きが、お見事としかいいようがない。本業は海人?



 一通り作業が終わると次の結界へ。こうして14箇所を回って行きます。

 与那覇地区の結界は、他地区との境界とか、海に続く道にあります。ですが、集落内にも結界があり、きっとそれなりの理由があるのでしょうが、よそ者にはよく分かりません。


 こうして、3時間近くかけて、無事、スマフサラが終わりました。次に何が始まるかというと、当然打ち上げです。(^_^;)





 今回初めて、スマフサラという神事(儀礼)を知ったのですが、調べてみたら、本島北部から西表島まで、沖縄各地で行われているのですね。


 スマフサラという呼び名は、地区により、スマフサラシ、スマクサラシ、シマクサラシなど微妙に違いがあり、村落の端を意味するシマヌクサーラという言葉から派生したものと考えられています。
 シマクサラシを、漢字で、「島腐らし」と書くこともあるようです。


 村への災厄の侵入を防ぐことを主眼とした村落レベルの儀礼で、動物の骨を挟んだ縄が村の入口に張り渡されるというのが基本パターン。

 この場合、村といっても、地区、集落といった単位です。


 
 発祥がいつなのか、よく分かっておらず、歴史がある分、バラエティに富んでおり、地区によって、骨は、豚、牛、羊、鶏であったり、骨ではなく、米、餅、塩、料理などであるところも少なくないようです。

 時期も、1月から12月のすべての月で行われており、年に1回とも限らず、6年に1回の地区から、1日置きの地区まで。

 さらに、骨などを吊したり置いたりして終わりの地区と、ツカサによる祈りもある地区があって、全部を組み合わせると、200~300とおりにもなるそうです。


 

 




 スマフサラのもう一つ儀礼は、肉を食べること。

 肉を食べると、流行病を払う力が身につくといい、災厄を払うために結界にぶら下げた骨と同じ物を体内に取り入れることで、個人レベルでも防災の力を獲得することができると考えらているとか。

 豚を解体して、吊す前に料理していたのは、集落の人達に食べてもらうためでした。



 昔の島人にとって、豚肉は貴重品。祝い事の時に1頭潰して、ご近所にお裾分けをする習わしだったようです。

 スマフサラで配られる豚肉は、きっと大変なご馳走だったのでしょう。そんな、貴重な豚を余さず活用するための料理が、ワープニ汁と血イリチーなのかも知れません。


 
 翌朝、民宿の朝食でお裾分けされたワープニ汁。食べ慣れたとんこつラーメンのスープと比べれば、異次元の濃厚さでしたが、これで煮込んだ蕪は、超旨かったぁ!





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2 件のコメント:

  1. やっとこの記事に辿り着きました!
    宿で写真だけ見せてもらっても意味がわからずで(笑)
    日本でもこのような風習がまだあることに驚きです。

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    1. すみません。汗

      自分もまったく知りませんでした。それに、もし天気がよかったら、多分、海の写真を撮りに行っていたと思います。本当に偶然です。

      また、お目にかかれますよう。

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