「昔はよかった」などと口走ると、若い人達からは「オヤジの懐古趣味だ」というツッコミがありそうですが、沖縄の海の珊瑚礁に関しては、本当に「昔はよかった」なのです。
それも、何十年前の話ではなく、ホンの10年、いや、数年前と比べても、沖縄の海は、ひどいことになっています。
まずは、こちらの写真をご覧ください。
波照間島のニシ浜です。ビーチエントリーで気軽にシュノーケリングが楽しめる海でした。これは、2012年9月に撮ったものです。
7年後の2019年8月の同じ海です。
これでは、「昔はよかった」と言わざるを得ません。
珊瑚がダメになった、という話は色々な人から伝わっていました。
小浜島細崎沖は、もう珊瑚礁がないとか、宮古の八重干瀬は、昔を知っている人にはもう案内できない、といった類の話をずいぶん聞かされました。
自分自身でも、池間島のブロックビーチや黒島の仲本海岸などで、前の方が綺麗だったな、とは感じていました。
しかし、波照間島のニシ浜で、泳いでも泳いでも、まともな珊瑚が見つからない状況を目の当たりにして、これはマジでヤバイことになっているぞと思い始めたのです。
沖縄の珊瑚礁は、本当にこのままダメになってしまうのでしょうか。
沖縄に限らずですが、珊瑚礁が消滅してしまう原因としては、
珊瑚の白化
オニヒトデによる食害
台風による破壊
海洋の酸性化
地域的な要因による生態系の破壊
などが指摘されています。
珊瑚の白化とは、海水温の上昇によって、サンゴと共生している褐虫藻(かっちゅうそう)が逃げ出してしまうため、サンゴの骨格が透け白く見える現象です。
一時的であれば問題ありませんが、長期間褐虫藻がいないと、栄養を受け取ることができなくなり、珊瑚は死滅してしまいます。
オニヒトデは、珊瑚を食い荒らす害獣とされています。オニヒトデは、数年に一度大量発生しますが、そのメカニズムはよく分かっていないそうです。
ただ、オニヒトデの幼生は、富栄養化によるプランクトンの大量発生で成長が促進されると考えられています。
台風が巨大化することで、珊瑚礁が根こそぎ破壊されることがあります。一般に台風の襲来は、海水温を下げる効果があるため、珊瑚の白化の防止には役立つのですが、過ぎたるは及ばざるがごとし、ということなのでしょう。
海洋が酸性化すると、石灰化に必要な炭酸イオン濃度を下げるため、炭酸カルシウムを主成分とする珊瑚の成長を阻害します。
元々海は、大気中の二酸化炭素を吸収する役割を担いますが、二酸化炭素量が多くなれば、水と反応して、本来アルカリ性である海水が酸性化する恐れがあります。
地域的な要因としては、開発による土砂の流入、汚水の流入やゴミの投棄による富栄養化、珊瑚の病気などのほか、漁業や観光による直接的な生態系の破壊が挙げられます。
土砂が流入すると透明度が落ちて光量が減少するため、珊瑚の成長を阻害します。
生活雑排水や有機ゴミが流入すると、海水が富栄養化(窒素やリンの増加)し、植物性プランクトンが大量発生して、それを餌とする魚類が急増するという連鎖で、生態系のバランスを崩すのです。
この中では、珊瑚の白化が、最も強烈です。それ以外でも、未だよく分かっていないオニヒトデ問題と、地域の要因を除けば、つまるところ、地球温暖化が珊瑚死滅の原因ということになりそうです。
そうなると、これはちょっとやっかいです。問題が大きすぎます。沖縄の珊瑚云々ではなく、全地球、全人類の課題であり、当ブログごときが、とやかく言える問題ではありません。
では、それでもうゲームセットなのか、何かできることはないのか、考えてみました。
珊瑚の白化現象は、主原因は海水温の上昇なのですが、毎年徐々に進行していくという感じではなく、周期的に大きな波があるようです。
直近では、2016年に大規模な白化現象がみられました。この年は、7月になってようやく台風1号が発生するなど、台風が少なく、海水温が上昇し続けたことが原因とされています。
石垣島と西表島の間にある、国内最大のサンゴ礁である石西礁湖では、調査ポイントの97%で白化現象が見られ、そのうち5割を超える珊瑚が死滅したとされました。冒頭でご紹介した、波照間島ニシ浜も、おそらくこれでやられたのでしょう。
それ以前にも、1980年、1998年頃に、大規模な珊瑚の白化現象が観測されています。たまたま18年周期になっていますが、まあこれは偶然でしょう。
ただ、ニシ浜のように、白化により消滅してしまう珊瑚礁群もありますが、持ちこたえる個体もあり、次の白化までにある程度回復する珊瑚礁群もあります。
宮古島周辺の海では、2016年にはダメージを受けましたが、2017年以降徐々に復活し、石西礁湖に比べればかなりマシ、だそうです。
つまり、大きな流れでは、白化による珊瑚礁の減少が進んでいるようですが、単純に絶滅一直線ということでもなさそうです。
また、ダイバーなど関係者による、珊瑚の苗の植え付け、併せて、オニヒトデの駆除といった地道な活動が行われ、珊瑚礁の回復・保全に役立っています。
その前提で、海水の富栄養化を防ぐこと、直接的な生態系の破壊を防止することなどに努めれば、珊瑚礁の減少にストップをかけるのは無理でも、そのスピードを緩やかにすることはできるかも知れません。
我々観光客レベルで意識するべきことは、シュノーケリング中、珊瑚に触れない、壊さないということに加えて、珊瑚の海を汚さないということでしょう。
ゴミを捨てないというのは当然ですが、この際だから、ペットボトルの飲料の残りを海に流さないといったレベルまで徹底するのはどうでしょうか。
少し神経質過ぎるかも知れませんが、ただ遊びに行くという立場では、これくらいの心構えでいいと思います。
もちろん魚の餌付けなんて論外です。
また、地域(島)に働きかけるべき事としては、開発のよる泥土の流出防止、ゴミの不法投棄の監視、汚水・富栄養水の流出防止のための下水道・浄化槽の整備、オーバーツーリズムの回避といったことだろうと思います。
そうすることによって、珊瑚の死滅を少しでも減らし、あるいは、遅らせるうちに、もしかしたら、地球温暖化問題でも、画期的な進展があるかもしれません。
沖縄の海は、ダイビングをしなくても、シュノーケリングだけで、極端に言えば、海に顔を浸けるだけで、熱帯魚や珊瑚を見ることができます。
自分は、初めて石垣島に行ったときそのことを知り、以来、沖縄にはまりました。
という話は、当ブログを以前から読んでいただいている人にとっては、「またその話かよ」だと思います。でも、その「沖縄の海」が「昔の沖縄の海」に変わってしまったら、本当にオヤジの懐古趣味になってしまいます。
沖縄好きとしては、「沖縄なんて遠いし、暑いし、高いし・・・」なんて言っている人に、ドヤ顔でこんな光景を見せてやりたいと思いませんか? 笑
そのために、我々ができることが、まだ少し残されているように思います。
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この記事を書くに当たっては、web上で閲覧可能な、次の機関・団体の記事や報告書などを参考にしました。
国立環境研究所地球環境研究センター
沖縄県衛生環境研究所
環境省九州地方環境事務所那覇自然環境事務所
八重山環境ネットワーク
WWF
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