本当にしつこくて厄介な台風でした。
強い勢力を保ったまま沖縄近辺をノロノロと迷走し、県民や観光客に多大な被害をまき散らした、令和5年台風6号です。
沖縄の台風に関しては、通り一辺倒な報道しかしない内地のマスコミが、今回は熱心に報道していたことからも、台風6号の異例さが分かります。
そんなの中で、もの凄く気になるコメントを沖縄タイムスが報じました。
「沖縄県ホテル協会の会長が、コロナで進んだ従業員不足を懸念。『各ホテルとも台風時の対処には慣れているはずだが、(コロナの5類移行後)久しぶりに多くの観光客が訪れている。宿泊客への対応が十分にできているだろうか』と案じた。」というものです。
台風6号よる航空機への影響
那覇空港では、7月31日の最終便辺りから欠航が始まりました。
当日、JAL・ANA共、定期便に加え臨時便を飛ばし、フル稼働して台風前に島を出たい客を捌きましたが、多くの客を積み残したまま、8月1日・2日は全便欠航。空港事務所も閉鎖となりました。
ただ、那覇空港ターミナルは一部が開放され、テントのようなものが張られ、ホテルに宿泊できなかった観光客を受け入れていました。
3日になって、那覇市内では朝からゆいレールが運行再開されましたが、航空機の場合そう簡単にはいかないようで、ANAは、午後便から運航を再開、加えて、羽田行きだけでも3便の臨時便を飛ばしました。
JALは、同日は一旦全便欠航とした上、午後以降、羽田行き5便を含む計11便を臨時便として飛ばしました。
これは、機材繰りの関係から、どの便を運航するか判断が困難だったため、一旦ガラポンして、可能な機材を効率よく運用したためと思われます。
しかし、執拗な台風6号が再び襲ってきたため、再開もつかの間。運航できたのは翌日の4日までで、5日・6日は再び全便欠航となってしまいました。
(JALのHPより)
宮古空港・石垣空港でも、7月31日にJAL・ANA共に、羽田直行の臨時便を飛ばすなどの対応を取りましたが、翌8月1日に一部の便が飛んだだけで、3日まで全便欠航。空港ターミナルも閉鎖されました。
4日になっても宮古空港は全便欠航、石垣空港は一部の便でようやく運航が再開されました。
運航再開後にも、多くの臨時便が飛びましたが、中には「予約は受け付けません」という注記のあった便も。
これは、恐らく、空席待ちをしていた大量の客を捌くのが目的だったと思います。
下地島空港も、8月1日から4日まで全便欠航となったようです。
これらのことから分かることは
今回は、非常に多くの臨時便が運航されました。おかげで助かった、という人も少なくなかったと思うのですが、これは、機材に余裕がある大手にしかできない芸当です。
LCCだと、もちろん便の変更は可能ですが、便数自体が少なければ、運航再開直後の便への変更は厳しく、現実問題として、予約をキャンセルした上で、JAL・ANAに乗って帰る以外に選択肢がありません。
直前の購入となるので高額な普通運賃で、しかも、JAL・ANAとしても欠航便の予約を持っていた客が優先されるでしょうから、新規予約はより厳しいことになるでしょう。
やはり台風の多い夏の沖縄では、LCCは、ハイリスク・ハイリターンであることを承知の上で、購入する必要があると改めて感じました。
各空港とも、欠航、運航再開時刻の判断は、JAL・ANAで異なりました。
同じ空港を使用し、同じような飛行機を飛ばすのに、何故そうなるのか不思議ですが、今回もその傾向が顕著に見られました。
ネットでチェックしていた限りでは、今回はANAの方がJALよりも、運航再開後に多くの便を飛ばした印象ですが、だからといって、ANAの方がJALよりも頼りになると考えるのは早計なので、この点、今後も注視して行こうと思います。
また、今回気が付いたのですが、両社共一定の条件の下、webでの空席待ちができるようになっていました。
ただ、ANAは、割引運賃ではwebでの空席待ちはできない旨注記があったので要注意です。JALはその類いの注記はなかったようですが、見落としかも知れません。
また、予約を持っていないとシステムに入れないので、使い勝手等は分かりません。参考程度の情報としてお読みください。
さらに、今回の台風報道を見ていて、気になることが2点ほどありました。
観光地沖縄が台風に弱くなっているのではないか
冒頭の「沖縄県ホテル協会の会長が、コロナで進んだ従業員不足を懸念。『各ホテルとも台風時の対処には慣れているはずだが、(コロナの5類移行後)久しぶりに多くの観光客が訪れている。宿泊客への対応が十分にできているだろうか』と案じた。」というコメントは非常に気になります。
台風銀座の沖縄では、いざという時の観光客対応の経験とノウハウがありました。
ところが、今回報道されたところによると(必ずしも客観的事実が報道されているとは限りませんが)、ホテルの延泊が適わず別のホテルを探しているとか、行き場を失って空港ターミナルで夜を明かした、という人が少なからず居たようです。
以前は、台風時に、空港の観光協会のカウンターで、ホテルの斡旋や空室情報の提供がありました。
ホテル側も、台風時の特別救済価格で受け入れてくれたところもありました。
台風で足止めを食らった客が出るということは、当然来られない客のキャンセルがあるので、多少の混乱はあっても、最終的にはプラマイゼロになるはずです。
にも拘わらず、予約を受けられないということは、実際に空室があってもシステムに反映されないとか、清掃やリネン交換の手配ができないといったことが考えられます。
このことは、2018年に宮古島で台風に遭遇した際に、知人から既に聞いていた話です。
客からすれば、こんな時に清掃はいいから、同じ部屋に延泊させてくれ、と思う人は多いでしょう。
その後、コロナ期間を経て、さらなる人手不足が進行し、人的サービスを極力絞ったタイプのホテルも急増しています。
また、幸か不幸か、ここ3年ほどは台風が接近することが少なく、台風対応を経験したホテルマンの数も減っています。
そんな状況を、ホテル協会の会長が憂慮していたとすれば、これはもう、かなり深刻だと考えざるを得ません。
当ブログでも過去記事に、沖縄には台風時のノウハウがあると書いて来ましたが、台風でも以前ほどケアしてくれない、となりつつあるのかも知れません。
観光客が台風を甘く見てしまった可能性も
台風6号は、7月26日に赤道付近で発生した熱帯低気圧が、28日未明に台風になったもので、その後、概ね進路予想どおりに沖縄に接近しました。
近年、沖縄付近で突如発生したり、急に進路を変更する台風もあって、バタバタすることもありますが、台風6号は、少なくとも沖縄に接近するまでは、いわば定番のルートで発生・進行したため、事前の予測が十分可能でした。
航空各社も、遅くとも29日には、運航の見通しを発表していましたから、早めの対策が可能だったと思われます。
31日になって空港に並んだ人の中は、当日便に乗れなかった人も相当数居たそうですが、前日までに動いていれば、何とか帰れた可能性は高まったと考えられます。
せっかく沖縄に観光に来たからには、ギリギリまで楽しみたいという気持ちは、もの凄くよく分かります。
ですが、ここは冷静になって、万一予約便が欠航になったらどうなるのか、欠航にならなくても、台風接近時にできることがあるのかなど、想像力を働かせてください。
ホテルに閉じ込められると、何もすることがありません。停電して冷房も使えないという事態も実際に起こっています。窓に叩きつける暴風雨は、部屋に居ても怖いし、密閉されているはずの窓枠から雨水が染みこんで来ることすらあります。
特に、仕事の関係などで一切の予定変更が困難な人、高齢者や小さな子供連れの人などは、一段ギアをアップしたリスク回避をお勧めします。
(気象庁HP)
台風6号は、本当にしつこくて迷惑な奴だったと思いますが、規模的には最強台風というわけはなく、中の上、5段階のうちカテゴリー4クラス程度のものです。
最大瞬間風速は、那覇空港で50メートル、宮古空港で39メートルを記録しましたが、過去には、宮古島で85.3メートルというとんでもない数字が残っています。
進路を予測し難かったという専門家のコメントもありましたが、北西方向に向かっていた台風が沖縄付近で東寄りに向きを変え、その際速度が低下し、沖縄で台風の影響が長引くということ自体は、決して珍しい話ではありません。
令和4年台風11号は、南西に進んでいた台風が、沖縄の南で突如として方向転換し、V字に北上を始めました。
近年の自然災害は、「過去に経験したことがないような」という修辞で語られることも多いのですが、台風6号に関しては、過去10年・20年の間に、似たようなことを何度も経験しています。
つまり、この程度の台風、と言ってしまうのは当時者には失礼かも知れませんが、ならば、過去の経験を活かして乗り切らなければならないもので、近年の異常気象からすれば、今後はもっと強烈な台風に備えなければならない可能性が高いと思うのです。
当ブログでは、以前から度々台風関連の記事を書いて来ました。
航空機の空席待ちの仕方など、変わったこともありますが、現地に着いてからの台風対応は、こまめな情報収集と早めの決断に尽きるということは、まったく変わっていません。
(宮古毎日新聞)
別記事に書いたとおり、自分は100回以上沖縄に行っているので、台風にもそれなりにかわいがってもらっていますが、それでも、行くまでは毎日気にしていた台風情報を、沖縄に着いたとたんに忘れてしまうことも、正直に言えば、あるあるです。
今回の台風6号は、沖縄に着いたとたんつい浮かれて忘れがちな大事なことを、改めて思い出させてくれたとも言えます。
※ 台風情報の収集に関してはこちら。
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