2024年2月27日火曜日

JTAの機内誌「Coralway」は楽しいけれど・・・ Ⅲ

 


 機内誌とは思えないほど気合いの入った、JTAの機内誌「Coralway」の話の続きの続きです。



 宮古島に大和(だいわ)食堂という店があります。

 メニューは、そばやカレーといったオーソドックスなものですが、島人には名の知れた店です。

 元巨人の清原和博選手が店にやって来たことがあって、サインを貰いたいが、色紙がない。
 そこで、おじぃは、壁に掛けてあったカレンダーを1枚破って裏にサインをして貰ったというエピソードがあります。

 そのカレンダーサインは、そのまま額に入れて店に飾ってありました。




 その大和食堂は、「Coralway」の「小さな島の小さな食堂」というコーナーに掲載されたのをきっかけに、観光客が列をなす店になってしまいました。

 「Coralway」に載ったのが2015年なので、コロナもあってブームはもう去ったかと思ったのですが、昨年の夏には、午後1時を回っても店外に行列が出来ていました。

 もはや、島人は近寄れない店に?


 「Coralway」の記事は、いわゆるグルメ記事ではなく、経営者家族の話が主です。

 料理の写真と、簡単なメニューの紹介、そして「そばのスープはあっさり系で上品」と書いてある以外は、料理についての記載はありません。

 特別の食材を仕入れているとか、秘伝のレシピがあるとか、コンテストで表彰されたとか、ちょっと気になるコメントは特にありません。


 それでも、並んででも食べたい有名店になっちゃったのだから、「Coralway」の影響力たるや凄まじいものがあります。




 小浜島にある「ゲストハウスパナパナ(現小浜の宿panapana)」は、「読者が好きな小さな宿」という特集で紹介されました。

 ここは元々人気宿だったので、載ったことで宿泊客がドバッと増えることはなかったのですが、当時のオーナー曰く、「電話の問い合わせが殺到してビックリした」とか。
 



 池間島のフナクスという場所は、シュノーケリングポイントとして有名です。

 フナクスは、20年ほど前までは、行く人もほとんどおらず、入り口にブロックが置かれていたことからブロックビーチと呼ばれ、知る人ぞ知るという場所でした。


 それが、口コミで広がり、「Coralway」に取り上げられてからは、来訪者が急増しました。
 「フナクス」という地名を広く紹介したのも、「Coralway」です。



 フナクスはその後、駐車場とトイレができ、そこからビーチに直結する通路が整備され、隣接する土地では草木が伐採され何やら建築工事が始まり、

 木造の建物の骨格らしきものができたもののその後放置され、いつの間にかトイレが使用禁止となり、ビーチに直結する通路も閉鎖され、気が付いたら珊瑚はほとんど死滅していた、

 という様は、まさに栄枯盛衰です。


 珊瑚の死滅は、2016年に起きた、海水温の上昇による白化が主原因とされますが、その前提として、人が増えたことは疑いようもありません。




 石垣島の川平タバガーは、自分も「Coralway」で知りました。映画だかドラマだかのロケが行われた場所で、地元では「撮影場」という名で知られているという紹介でした。

 行ってみると、対向車とのすれ違いが出来ない細い道を延々と走るハメになり、ハラハラしながら何とか辿り着くと、そこには静かな海が佇み、穴場を超えた秘境のような感じすらしたのです。

 たまたま、同じように「Coralway」を見て来たという人達がいて、海中の珊瑚も「まあまあだね」などと満足げに話していました。


 しかし、2年後に再び行ってみると、訪問者が激増し、終点の道の脇のほとんど僅かしかないスペースに、強引に車を駐めでもしないと海に行けない場所となっていました。





 宿や店なら、客が増えていいでしょう。しかし、自然だと単純に来訪者が増えればいいとは言えません。


 今は廃止されましたが、JTAが主宰する「おきなわ探訪 美ら島(ちゅらしま)物語」という沖縄情報ポータルサイトがありました。

 このサイトは、「Coralway」と連動していて、観光地やビーチ、イベントなど、同誌に載った情報をいつでも調べることができました。

 それが、一般の観光客が穴場ビーチを探し出すことに、良きにつけ悪しきにつけ貢献したように思います。



 情報を載せるなとは、もちろん言いません。いや、言えません。当ブログでもフナクスや川平タバガーを紹介しています。

 ただ、違うのは影響力です。当ブログでは大した情報も提供できませんが、仮に、読者にとって貴重な情報を提供できたとしても、それで社会が変わることはないでしょう。

 「Coralway」並の影響力は、むしろ将来の目標というか夢です。



 「Coralway」は、読み物としては楽しいし、情報誌としても凄いと思います。今回この記事を書くためにバックナンバーを読み返してみて、改めてそう感じました。

 これからもディープな沖縄をどんどん掘り下げてもらいたいと思う一方、情報提供に当たっては、その”強さ”も自覚していただいた方がいいと思うのですが。







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