2016年5月13日金曜日

沖縄都市モノレール・ゆいレールの正しい使い方



 鉄道ネタが続きますが、今回は、現役の方のお話です。
 沖縄唯一の鉄軌道系の公共交通として、ゆいレールが開通して10年ちょい。那覇市民や観光客の足として、完全に定着しています。

 移動手段がバスとタクシーだけだった頃に比べれば、格段と便利になったことは間違いないのですが、10年以上続いて、この状態に慣れてしまうと、それなりに不満も出てくるもの。


 たまにしかゆいレールを使わない観光客の人向けに、色々細かい情報をお伝えしようと思いますが、そもそも、始めから期待しすぎず、それなりのものだと思って乗れば、不満も起こらないのではないでしょうか。笑



 まず、ゆいレールは、思いのほか混雑します。

 ホームに並ぶ客の数は、大都市の鉄道駅と比べて、ホンのわずかですが、何しろ小型車両の2両編成。本数も、平日朝夕を除いては、10分~12分間隔。

 そして、那覇空港駅から乗ってくるのは、もちろん、大半が飛行機で飛んできた人。荷物が大きいのです。特に最近は、外国人観光客が多く、荷物も益々巨大化しています。

 あれだけの大人数でも、バッサバッサと捌く羽田モノレールと比べれば、アスリートと中学生くらいの違いがあります。
 


 下り、那覇空港駅発。
 那覇空港駅を出発すると、赤嶺・小禄・奥武山公園・壺川・旭橋・県庁前・美栄橋・牧志・・・の各駅に停まります(各駅停車しかありません)。

 一方、小禄駅辺りから、地元の利用者が乗ってきます。荷物の多い観光客は、まずホテルに向かうのでしょうが、ホテルが多いのは、旭橋駅~牧志駅の間。したがって、この区間が最も乗り降りに苦労する区間です。

 赤嶺駅から奥武山公園駅までは、進行方向右側のドアが開き、壺川駅・旭橋駅では左側、県庁前駅からまた右側ドアとなります。

 もし、壺川駅で降りる人は、始めから進行方向左側のドアに張り付いていればいいのですが、それ以外の人は、降りる駅で、大きな声を出して降ろしてもらうしかなさそうです。地元利用者も、慣れているので協力的です。
 むしろ、何も言わずに一人でガサゴソする方が、周りに迷惑をかけることにもなります。
 


 上り、那覇空港行き。
 観光気分で浮かれていると、当然のことをつい忘れてしまいます。平日の朝、ゆいレールにも通勤ラッシュがあります。

 大きな荷物を持ってホームで待っていると、ほぼ満員のモノレールが入線して来て、ガビーン!なことに。
 これまた、大声で「乗りまあ~す。」と叫んで隙間を作ってもらうしかありません。
 
 首里駅方面から乗って来る地元利用者は、県庁前駅でかなり降ります。なので、もし、平日の朝に、大きな荷物を抱えて那覇空港から飛行機に乗らなければならない場合、県庁前駅から空港寄りの駅近くのホテルを選ぶ方がいいと思います。

 エレベータの争奪戦も結構熾烈です。特に、上りの那覇空港駅到着時は、大きな荷物の観光客が集中しますので、スムーズにエレベータで荷物を下ろすために、最前列のドア付近に乗ってください。
 那覇空港駅のエレベータは、進行方向に向かって前の方に1基だけです。



 ゆいレールの駅施設は、質素です。
 基本的に、改札階が2階、ホーム階が3階となっていますが、エスカレータがあるのは、各駅2階から3階への上りが1基のみ。それも、幅が狭く、人が一人乗れる幅です。
 ホーム階からの下り、地上からホーム階への上り下りは、階段とエレベータのみ。運が悪いとエレベータ待ちをしなければなりません。
 ホーム自体も狭いです。待合室的なスペースもありません。
 改札階の駅構内が広い駅もあるのですが、せいぜい飲料の自販機があるかないか。

 でも、これはやむを得ないことではあるのです。過大な需要予測に基づく、過剰な設備投資をして赤字に苦しむ、首都圏近郊の新交通システムに比べれば、謙虚な姿勢であると、前向きに評価できるのではないでしょうか。

 と、まあ、理屈はともかく、新しくできた交通機関の施設としては最小限の規模で、駅は切符を買って、電車が来るのを待つ以外の機能はないと思ってください。


 那覇空港駅の切符売り場。飛行機到着時は、混むんですよね~これがまた。せめて、1列並びに誘導してくれればいいのに。


 ゆいレールでは、Suica・ICOCAといった鉄道系ICカードが使えません。

 代わりにOKICAという、専用のICカードが作られました。しかし、これは、導入後約1年半が経過した今でも、ゆいレールと一部の地元バス路線のみしか使えないという、極めて使い勝手の悪い代物。

 しかも、以前使えた磁気カードは、OKICA導入とともにあっさり使用停止となり、今では窓口による払い戻しのみ。
 首都圏でかつてあった、イオカードやパスネットは、販売停止後しばらくは、そのまま自動改札で使え、その後も数年間は自動券売機で切符が買えたのですが、そんなサービスはなし。
 直前まで売ったくせに。

 こんなことをされると、OKICAを購入しても、翌年行ったときには、「別のカードに変わったので使えません。」なんてことになっているかも知れず、利用する気にはなれません。


 OKICA導入後、乗車券もQRコード風になりました。下車しても回収されません。


 その一方、「一日乗車券」、これは、使えます。
 普通、一日乗車券といえば、暦日券なのですが、ゆいレールは気前よく24時間券なのです。これで700円。
 特に市内観光まではしなくでも、一旦ホテルでチェックインした後、飲食や買い物に国際通り周辺をぶらついて、翌日また空港へ、などという場合にはお得です。1200円の48時間券もあります。



 ところで、前回のシュガートレインの記事もそうですが、鉄道と軌道がゴチャゴチャになってしまいましたので、整理すると、鉄道と軌道は、基の法律の違いです。
 鉄道事業法の適用を受けるのが鉄道、軌道法の適用を受けるのが軌道です。

 実質的な違いは、主に専用路線を走るのが鉄道、道路施設と併用するのが軌道です。

 路面電車が軌道の典型例で、道路の地下を走っている地下鉄も、多くは軌道です。ゆいレールは、用地買収をしなくてすむよう、主に公道の敷地の上などに造られているので、軌道です。
 南大東島シュガートレインは、正式には軌道となっていましたので、おそらくは、線路と道路は共用だったのでしょう。

 鉄道と軌道をまとめて言うときは、「鉄軌道」となります。

 

 文句ばっかり言っていますが、ゆいレールができて便利になったことには、間違いありません。

 以前は、那覇空港に着いてから、市内のホテルに行くには、バスかタクシーを利用するしかありませんでした。
 
 バスは、渋滞や混雑で時間が読めないし、タクシーは高いし。
 しかも、那覇空港のタクシー乗り場には、一時に乗客が殺到するので、乗るまでが大変でした。タクシー自体は何百台と待っていたのですが。

 それに、ゆいレールは、高いところを走るので、見晴らしが抜群です。この点は、地元でも高く評価されており、地下鉄でなくて本当によかったと思います。
 上り那覇空港行きが、赤嶺駅を出発し、右に大きくカーブを切ると、左手に海が見えてきて、歓声があがることすらあります。

 それを考えれば、多少混雑しても、多少もたついても、荷物を抱えて階段の上り下りをしても、決して文句を言える筋合いではないのです。
 人間、だんだん贅沢になるもので。おっと、それは自分だけ?



 現在のゆいレールは、首里駅が終点。
 こんな形で、大胆にぶち切れていますが、浦添方面にあと4㎞ほど延伸計画があります。



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