観光客が激増し
公共工事やホテルの建設工事が急ピッチで進められ
建設作業員が好待遇で県外から集められ
アパートが作業員宿舎に充てられたため家賃が高騰し
建築費高騰にも拘わらず地主がアパート建築に着手する
そんな状況から「バブル」と言われていた宮古島。
ここ1~2年、宮古島と周辺離島では、信じられないほどのハイペースでホテルが開業しました。
しかも、今なお建築中、計画中のホテルが目白押し。中には、200室超、300室超という大規模なものあります。
そんな中で、コロナ騒動が起こりました。
当ブログでは、これまでも宮古島バブルを取り上げ、行く末を案じていましたが、仮定の話から、リアルな現実が迫って来たかも知れません。
宮古島バブルは、コロナの前に既にピークを越えていたとも言われています。
自衛隊基地などの公共事業が一段落し、建設作業員が徐々に減る中、人手不足のため工事が遅れがちだった新築アパートが、次々と完成しました。
需要と供給が逆転したのは、昨年秋ではないかと言われています。
そこにコロナです。
2月からクルーズ船が来なくなりました。月間数万人の外国人観光客が一気にゼロ。もちろん、国内旅行者についてもご承知のとおりです。
宮古島市の入域観光客数は、対前年同月比でいえば、4月が12.28%、5月は6.77%、6月は19.41%、と文字どおりの激減。
7月が39.69%でやっと少し戻しましたが、8月は、全国的な感染者増から余談を許さない状況で、そうこうしているうちに、かき入れ時の夏が終わってしまいます。
観光関連産業の従業員には、雇い止めや希望退職の嵐が吹き荒れています。
日本中の観光業界がコロナで青息吐息ですが、宮古島は突っ走っていた分、特に激しく転倒しました。
それでも、ホテルの建築工事はストップしません。緊急事態宣言時には一時工事が中断したり、海外からの資材の供給遅れがあったりと、計画通り進んでいないものがほとんどのようですが、観光客の少ない島内を、大型トラックが頻繁に行き交っています。
楽観的な予測をして、2021年にはコロナが終息し、2019年と同じ数の観光客が宮古島にやって来るとしても、既にホテルの客室数は、2019年を軽く超えているのです。
供給に見合った需要がなければ、つまり、2021年以降にこれまで以上に観光客が来てくれなければ、供給過多になってしまいます。
しかしそれは、コロナが早期に終息する以上に悲観的だと考えます。
新築ホテルは観光客のニーズとマッチしているのか
最近オープンしたホテルは、トレーラーハウスのような簡易なもの、ワンルームマンションの部屋貸しみたいなものもありますが、大部分は、高級リゾートホテルの部類です。
一番安くても、1泊朝食付きで2名1室の1人当たりの料金は1万数千円、高級な部屋になると1泊数万円といった値段設定がされているようです。
そうすると、単に観光客が増えるだけではダメで、高級ホテル志向の人、少なくとも宮古島に行けるならば宿泊費は気にしない、という層が増えてくれなければ困ることになります。
一般に、その宿に泊まること自体が旅の目的となることがあります。
しかし、宮古島にあっては、高級ホテルでも、温泉・グルメという二大観光要素で勝負することはできず、そこに滞在しなければ見られない絶景があるわけでもありません。
高級ホテルに泊まるといっても、あくまで宮古島観光の一環として、ゴージャスなホテルを選ぶだけなのだろうと思います。
一方で、宮古島周辺には、前浜、砂山、渡口の浜、17ENDといったオールジャパンでもトップクラスの美しい海が点在していますが、そこには、レンタカーさえあれば、民宿に泊まっていても行けるのです。
宮古島では、海に沈む夕日を泳ぎながら眺めるなどという、何とも贅沢な時間の過ごし方をする人達がいますが、そういう人達にとっては、ホテルは寝られればいい場所かも知れません。
夜は地元の居酒屋に行きたいから、西里通りなど繁華街に歩いて行けるホテルの方がいいと思う人も多いでしょう。
そうなると、ビーチサイドのリゾートタイプに偏重した宮古島の新築ホテルは、観光客のニーズと本当にマッチしているのか、甚だ疑問です。
以前だと、インバウンド・海外の富裕層という声が聞こえて来たかも知れませんが、今、声高に言える話ではありません。
新築ホテルは宮古島の台風を分かっているのか
いまさらいうまでもありませんが、沖縄は台風銀座です。それも、内地では数年に一度という大型台風が毎年のようにやってきます。
台風が接近するとホテルに閉じ込められますが、そういうときはむしろ、頑丈で設備の整っているホテルは安心です。
しかし、近年増えているヴィラタイプのホテルでは、レストランに行くにも売店に行くにも、一旦屋外に出なければなりません。台風の時には扉を開けるだけでも危険です。
さらに台風直撃ともなると、橋が通行止めになります。
伊良部島や来間島などのホテルに泊まっていると、欠航便の変更手続のために宮古空港に行くことすらできないのです。高級ホテルの客でも台風は容赦してくれません。
また、単独では最大と思われる329室のホテルが、2023年に開業する予定ですが、場所は、トゥリーバー地区という、中心市街地からやや離れた埋め立て地です。
ここは、埋め立て地だけあって平坦な土地ですが、当然、防風林など全くない風の通り道です。「あんな所で台風に遭ったら凄いよね」というのが島の人の声です。
伊良部島の南岸のビーチサイドにも、ホテルが続々と増えています。
ところが、宮古島の外周道路は、海が見える場所をほとんど通っていません。台風時に防風林で守られる造りになっているからです。
ホテルだけが増えても遊び場である海は増えない
今年2月、来間島に169室という大型リゾートホテルがオープンしました。
これは、宮古島市としては、東急やシギラエリアホテル群に次ぐ、大規模リゾートです。
満室ならば、1室2名としても3百数十人が滞在することになりますが、ホテル施設内に止まる客はほとんどいないでしょうから、その人達はどこかに遊びに行きます。
遊びに行くといっても、基本的に海しかない宮古島です。
前浜や砂山などのビーチ、インギャーマリンガーデンや東平安名崎などの絶景スポットに、それぞれ何十人単位で分散することになるのでしょうが、それだけ一気に増えると、落ち着かないと感じる人が多いのではないでしょうか。
観光客激減の今年ですら、名だたるポイントには、それなりの人出があるのです。
フナクス、中の島、吉野海岸などのシュノーケリングポイントでは、そんなに人が増えたらキャパオーバーです。
最近記事にした、保良泉鍾乳洞(パンプキンホール)のように、既にキャパオーバー寸前の場所もあります。
船で行く、ダイビングやシュノーケリングのツアーも、客が増えれば船は増えるかも知れませんが、人が増えれば、珊瑚や熱帯魚のストレスとなり、ポイントは荒れてしまいます。船が増えることによる危険も懸念されます。
さらにその上、新規の200室・300室分のホテル客が参戦すると、一体どうなちゃうのでしょうか。
その反面、海は増えません。
せいぜい、今まであまり人の行かなかったビーチの周辺に駐車場を造り、行きやすくすることぐらいでしょう。
でも、そんな場所はもうあまり残っていません。いい場所は、口コミであっという間に広まり、駐車場があろうがなかろうが、訪れる人が増えていきます。
むしろ、開発によって遊び場となる海が減っていくかも知れないのです。
宮古の海が綺麗なのは、川らしい川がなく、大雨でも土砂が海に流れ出さないことが理由のひとつとされています。
隆起珊瑚の島である宮古島は、降った雨が地面に浸透し、そのまま海に流れ込むことはありませんでした。
下の写真をご覧ください。
大雨の後、海に向かって泥水が流れ出しました。開発がなければにこのようなことは起きなかったかも知れません。
その時の海中の様子です。この状態が続いたら、太陽光が届かず珊瑚の生育に悪影響をもたらします。
(写真二点提供:「ひでちゃんtours宮古島」)
んホテル建築によって、宮古の海はむしろ劣化する恐れもあるということです。
海に定員はありませんが、適正人数というものがあります。
あまりに人が多い、のんびり出来ない、ずっと前から予約しないとダイビングにも行けない、珊瑚も少なくなったとなれば、いくらホテルがあっても、空港があっても、橋があっても、観光客はいずれ離れていくでしょう。
つまり、観光客が今後も増えたとしても、それは一時的で、何処かで頭打ちになります。何処でそれが起きるのか。ずっと先かも知れませんが、来年なのかも知れません。
市も、バブルの波に乗って、15万トンのクルーズ船が埠頭に接岸するための工事をしている真っ最中。
併せて、海外の観光客が買い物などを楽しんだり、宮古の歴史など感じることができる交流厚生用地を整備する(宮古毎日新聞)としていますが、大変失礼ではありますが、今時こんな構想をしている場合ではないと思うのですが。
バブルに踊り、コロナで痛い目にあった観光地宮古島。明るい兆しが見えない中、今なお増え続ける宿泊施設。
果たして、この先どうなるのでしょうか。考えられるパターンは、だいたい3つだと思います。
パターン1
コロナのダメージは一過性で、1~2年遅れで、観光客の右肩上がりの増加が復活し、ホテルも活性化する。
パターン2
コロナが終息しても観光客の延びは鈍く、ホテルは供給過多になり、価格競争の末、倒産も発生する。
パターン3
コロナ後、観光客の伸びは緩やかであるが回復し、ホテルは供給過多気味ではあるものの、業態変更や、サービス内容の変更などで共存できる。
パターン1が、ホテル事業者にとってベストな流れでしょう。でも、それが難しそうなのは、縷々書いてきたとおりです。
仮に、このとおり展開したとしても、遊び場である海が増えない以上、長続きはしないのではないでしょうか。
パターン2は、従来からの宮古ファンにとっては悪くない話だと思います。これ以上人が増えず、旅行代金も上がらない、いや、むしろ高級ホテルに安く泊まれることになるかも知れません。
しかし、ホテルが破綻すれば、失業者も出ます。関連する多くの業者も影響を受けてしまいます。
閉鎖されたビーチサイドのカフェ、使われなくなったイスやテーブルが無造作に砂浜に積み上げられた姿など、あまり想像したくありません。
そうなると、パターン3、すなわち「ほどほど」がベストなのでしょうが、多分これが一番難しい。
そのためには、誰かが調整役を買って出る必要があります。これこそ、市の役割です。
きちんとした、観光マスタープラン的な方針を立て、将来を見据えて、最も重要な観光資源である海を守りつつ、観光関連産業を最低限保護し、そして、従業員の生活も守る。そんな政策を市に期待したいのですが・・・
でも、多分無理でしょうね。
前からずっとそんなことを思っているのですが、一向に動きはありません。、
もっとも、市は、コロナでの件では他地域のような過剰な反応を示さず、その点は好感が持てました。何もしない、というのが宮古島市の特徴なのかも知れません。
市がやらないなら、誰かが代わって、その役割を果たしてくれないでしょうか。
団体とか、事業者とか、たとえ個人であっても、長期的な視点で、宮古島のあるべき姿を考えてくれる人を、たいした役には立てませんが、当ブログとして応援させていただきます。
コロナ後の宮古島がどうなるのか、目が離せません。
※ 宮古島バブルに関しては、以前にこんな記事も書いています。
宮古島バブル 宮古島はどうなっちゃうの?
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