2020年3月20日金曜日

コロナショックは宮古島バブル崩壊の引き金を引くか



 「音を立てて崩れる」とは、まさにこういうことを言うのでしょう。

 宮古島市が発表した、今年2月の入域観光客数は、対前年同月比で29.65%の減少。クルーズ船利用客に限って言えば、昨年2月の21,496人が一気にゼロになりました。
 原因は、言うまでもなくコロナショックです。


 宮古島はバブルだと言われてきました。このことは、当ブログでも以前記事にしました。
 もしかしたら、予想だにしなかったコロナショックが、早々とバブル崩壊の引き金を引いてしまうのでしょうか。




コロナショックで宮古島にどんな影響があったのか

 宮古島市の入域観光客数は、昨年度が過去最高の1,143,031人。平成25年度は約40万人でしたから、なんと5年で2.85倍に急上昇したことになります。しかし、今年度は、対前年度比でマイナスとなることは、間違いありません。


 1月の途中から3月まで計36回のクルーズ船寄港がキャンセルされ、3月9日現在で、宮古島市の経済損失は、既に21億円にのぼります。(宮古毎日新聞)。


 宮古島観光協会の担当者はこう肩を落とす。「入港予定だった中国や台湾からのクルーズ船のキャンセルが相次いでいます。クルーズ船の乗客は1隻あたり2千人から2千5百人で、朝に上陸して夕方に帰船するケースが多かった。その間にタクシーを使ったり、お土産物を買ったりと、クルーズ船観光客の島での消費金額はひとりあたり約2万円。これが全部消えるのですから大ダメージです。」 単純計算で「24隻×2500人×2万円=12億円」を、3月だけで失うことになる。(デイリー新潮3/18配信)



 以前は、宮古島ではほとんど見かけなかった観光バス。最近は、列をなして観光地に向かいます。クルーズ船の利用客を運ぶためです。

 一体、今宮古島にはどのくらいのバスがあるのか、各社のホームページで大型バス保有台数を調べてみるました。A社が26台、B社は34台、C社が8台。これとは別に、インバウンド専門を謳う会社も進出してきています。

 これらは、大半が観光バス。クルーズ船入港がゼロなら、観光バスの稼働も限りなくゼロに近いはず。

 


この先どうなるのか

 そもそも原因が原因だけに、今時点で将来のことは見通せません。

 2月に限っていえば、影響はクルーズ船のみということで済むのですが、問題は、3月以降です。

 
 沖縄観光コンベンションビューローが3月17日に発表した「おきなわ観光天気予報」によると、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で3、4月の空路客と海路客は前年同月比70%未満と大幅に割り込む見通しで、2015年の調査以来初めて「大雨」と予想した。
 3、4月の空路客は国内・海外路線が大幅に減便する影響で、ホテル予約も前年同月と比べ60%前後と低迷し「大雨」と予想。
 今月9日時点の海外航空路線は、180便減の週50便となっている。国際線で中国や香港、韓国、タイ路線が運休になったほか、国内線も羽田や関西、福岡などの路線で減便が相次いでいる。
 5、6月の空路客はホテル予約が7割を超えており「雨」と予想。ただ、担当者は「影響が長期化すれば予約キャンセルの可能性もあり予断を許さない状況だ」と懸念する。海路客は中国を中心としたクルーズツアーのキャンセルが相次ぎ3~6月は「大雨」と予想。3月の寄港回数は前年同月比32回減の4回、4月は23回減の6回、5月は24回減の11回、6月は34回減の4回と見込む。(沖縄タイムス)



 本来ならば、これから夏に向かって、国内の個人旅行客が増加します。しかし、これを書いている3月20日の時点では、世の中自粛モードで、あまり明るい話題はありません。

 現在、JTA・ANA共、那覇・宮古便は1~2便の減便が行われており、下地島空港にやって来る香港エクスプレスも運休中。4月以降これらが復活するのか、今時点では何とも言えません。
 むしろ、さらなる減便がないとも言い切れない状況です。

 4月19日に予定されていたトライアスロンは、中止が決定しています。

 少なく見積もっても、夏休み前までは苦戦が続きそうです。


 また、クルーズ船という乗り物自体が、世界中に悪名を轟かせてしまいました。コロナショックが治まっても、当分、乗る方も受け入れる方も抵抗があると思います。

 クルーズ船利用客に関しては、影響はもっと長引きそうです。




観光地宮古島の現状はどうなのか

 間の悪いことに、宮古島と周辺の島では、ホテルが開業ラッシュで、この2月に、来間島に169室という大型ホテルが開業したばかりです。

 昨年から今年にかけて、宮古島の前浜近く、南海岸、東海岸、来間島長崎浜、伊良部島南海岸などでリゾートタイプのホテルが次々とオープンしています。シギラエリアでも、新たな大型ホテルが営業を始めました。

 これに、今後オープン予定のホテルがまだ続きます。


 さらに、開発予備軍も控えています。

 市農業委員会によると年間10~15㌶程度だった農地転用が18年度には40㌶を超え、19年度も同程度が見込まれている。(宮古経済新聞)
 
 農地が、ハイペースで宅地や商業地に変わっていると考えられます。


 行政からして、イケイケドンドンで開発を進めています。

 宮古島市では、クルーズ船の大型化に対応するため、平良港に15万㌧級のクルーズ船が接岸できるよう浚渫工事などを進めていますが、これを更に22万㌧級まで対応できるよう新たな計画を策定しています。

 それだけではありません。

 既定計画の緑地2ヘクタールを1ヘクタールに減らす一方で、海外の観光客が買い物などを楽しんだり、宮古の歴史など感じることができる交流厚生用地も整備するとしている。(宮古毎日新聞)


 こういった状況の真っ只中で、月間2万人余りのクルーズ船旅行客がゼロになり、ホテルの予約が激減するという、厳しい現実を突きつけられているのです。




むしろチャンスなのでは 

 宮古島の現状は、コロナショックさえなければすべて順調、というわけではなかったと思います。

 数字の上では右肩上がりの島経済は、一方では、家賃の高騰、オーバーツーリズムなど様々な歪みを生み出してきました。だからこそ、宮古島はバブルと言われ、警戒されていたわけです。


 クルーズ船利用客のために、大型バスが用意されました。前浜港には大型用の駐車場も整備しました。そのおかげで、数百人、あるいはそれ以上の人が一度に前浜を訪れます。
 そのとき、前浜がどういう状態になるかは、容易にご想像いただけると思います。しかも、トイレは以前のままなのです。

 この問題は、昨年12月にTBS系のNスタという番組で「魔の水曜日」というタイトルで全国放送されています。


 そうすると、前浜の自然形態にとっては、むしろコロナショックのお陰で一息ついたとも言えるのではないでしょうか。

 もっと言えば、今まで宮古島が抱えていた、家賃の高騰、乱開発、水不足、人手不足といった諸課題も、コロナショックのおかげで多少改善されるかもしれません。

 そうであるならば、今はピンチですが、チャンスでもあると言えそうです。

 

 観光地宮古島が絶対にしてはならないことは、日本一とも言われる宮古の海を大切にせず、ないがしろにすることです。

 それは、自然保護という側面だけではなく、第一級の観光資源を、現役世代が浪費してしまわないという意味もあります。綺麗な海さえ残っていれば、観光客は必ず帰ってきます。

 もし、前浜が、他のビーチが、オーバーツーリズムのせいで以前よりも見劣りする海になってしまったら。
 観光客は宮古島を見捨て、より魅力のある海を求めて別の島に行ってしまうでしょう。

 
 コロナショックにより観光客が減少し、ホテルや観光バス・タクシーが供給過剰となることで、宮古島バブル崩壊の引き金を引いてしまうかもしれません。
 そうであってもそれは、いずれ訪れることが早まっただけだとは考えられませんか。

 コロナショックは、現状の諸課題を一旦立ち止まって考える、ちょうどいい機会なのではないでしょうか。
 



我々は誰を応援すべきか

 観光客の増加を当て込んで、ホテルや商業施設を開設し、バスやタクシーを増車するなど様々な投資をして事業を拡大してきた事業者にとって、今回のコロナショックは、たとえ一過性のものだとしても大打撃だと思います。

 お気の毒だとは思いますが、それはやむを得ないことだとも思います。自らの経営判断で事業を展開したのですから、不可抗力とはいえ、リスクも受け入れていただくしかありません。

 それは、個人の事業主でも、自分の判断で事業を拡大した人は同じです。経済成長を夢見た行政とて代わりありません。 

 何億円の損失とか言われますが、本当に損失なのでしょうか。思い通り収益があげられなかった、取らぬ狸の皮算用だった、というだけのことではないでのでしょうか。


 守らなければならないのは、そこの従業員の生活や、従来から変わらず同じ商売を続けてきて、たまたまバブルに巻き込まれてしまった事業者達です。


 以前の記事でも書きましたが、我々島外の観光客としては、バブルと言われた浮かれた状況の中でも、地に足を付けて地道に生活し、あるいは、従来どおりのサービスを提供してくれていた人・業者を応援し、その人達と今後も変わらぬお付き合いをすればいいと思います。




 日本が、世界が、コロナショックという思いもかけない出来事に突如見舞われました。一刻も早い終息を願うばかりですが、この先どうなるのか、楽観視できません。

 バブルと言われる宮古島がどうなってしまうのかも、誰にも分かりません。


 「宮古・八重山の美しさ楽しさ居心地の良さをお伝えする」と宣言している当ブログとしては、宮古島に限らず、沖縄の各島が、コロナショックでおかしくならないことを祈りつつ、今後どうなって行くのかしっかり見届け、また記事にしたいと思います。



 最後に、直接宮古島には関係ありませんが、Yahooニュースで目に留まった、コロナショックと観光に関する記事を2点引用しておきます。


 これまで、あたかも日本再生の特効薬であるかのように「観光立国」や「インバウンド」という言葉が使われてきた。確かに昨年までを見ると、数字の上では、訪日外国人旅行者数は増え、経済的な効果も大きかった。しかし、無名の温泉旅館の経営破綻は、それが特効薬なんかではなく、使い方を少し間違えただけで大きな副作用に見舞われる劇薬であることを示唆しているのではないだろうか。(THE PAGE 3/8配信)


 こうして各地を回ってみると、観光業特有の危うさが如実に浮かび上がってくる。急激なブームとその後のバブル崩壊を見ると、観光業は浮き沈みが激しく、バクチ的要素すら付きまとうのだと感じられた。コロナ不況は始まったばかりで、観光地で働く人々には、まだ現状を笑い飛ばす余裕があった。(Newsweek 日本版3/18配信)





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2 件のコメント:

  1. わたしも宮古島に30年通って 年々ホテルの建設が増えているなと実感してますね、確かにインバウンドでお金は入るのでしょうけど、島の住民に取っては中国人が大挙して上陸することにはっきり言って迷惑だと思っているようです。クルーズ船が入港する曜日は島の人間はドンキホーテとイオンのスーパーには行かないと話してましたね、中国人に対する不安がありますから もしクルーズ船に人民解放軍5000人乗っていても分からない訳ですから そうなったら宮古島はたちまち占領されてしまうよと聞いてます。実際に中国は平成25年に宮古島石垣島上陸訓練を行っています(米軍情報による)
    観光客を当てにするしかない沖縄県ですから開発を進めるしかないんでしょうね 昔のひなびた宮古島は遠くになりけりです

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    1. コロナが転機となって、禍を転じて福となす、ということになってくれればいいのですが。

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