あの日の夜、ヤツはこの島にやって来た。
ヤツは、普段は石垣島を拠点に堅気の仕事をしている。だが、ヤツのもう一つの顔は、トレジャーハンター。人呼んで”狩猟者(ハンター)B”。
朝、ホテルの支配人と私は、島内でBの示した条件に合致する場所を探していた。
「その条件に合うのは、N浜崎です。」
「よし、そこに行け。時間は9:45だ。」
私は、命じられるままに、N浜崎に車を飛ばした。Bは車を降りると素早く身支度を調え、N浜崎の美しい海へと消えて行った。
だが、獲物(ターゲット)は見つからなかったようだ。
Bは、直ぐさま猟場(ポイント)の探査を開始した。スマホを見詰めるBの目が光った。「すぐに車を出せ。T 漁港横の海岸だ。」
20分ほどで漁港の駐車場に到着した。Bは車を降りるや、直ちに海岸に向かった。
「だめだ、盗(や)られていた。」
誰かが先にお宝(トレジャー)を根こそぎ持って行ったらしい。もうダメなのか。
ここで、Bの鋭い嗅覚が働く。「 I ギャーの西だ。急げ!」 だがこの時、既に干潮時刻を過ぎていた。刻一刻と潮が満ちてくる。時間がもう無い。
数十分後、海にいるBから指令が届いた。「用意したアレを持ってこい。」
アレが必要になったということは、ついにお宝(トレジャー)を見つけたということだろうか。
Bは、重そうに獲物(ターゲット)を海中から引き揚げた。
「これが、狙っていたトレジャーですか?」「何を言っているんだ。ティラジャーだ。」
沖縄ではティラジャーと呼ばれますが、一般にはマガキ貝、地方によってはコマ貝、チャンバラ貝と呼ばれているようです。
沖縄のほか、鹿児島県、高知県など、温暖な海に面した海岸に生息します。
ティラジャー下茹で中。海水で茹でるのがポイントだそうです。
珍味のお相伴に与ることができました。
コリコリした歯触りと、さっぱりしているけれど、噛みしめると微かな甘みと旨味が広がる独特の食感。
採り立ての新鮮であることに加え、調理自体も上手いのでしょう。こりゃはまるわ。自分的には、日本酒のお供に最高!てな感じでした。
ティラジャーの潮干狩り、貝拾いは、島人のお楽しみ。でも、難易度は高いらしく、どこにでもいて、誰でも捕れるというわけではなさそうです。
また、場所によっては、漁業権により一般の人が捕ることが禁止されている場合があります。
石垣島、西表島の国立公園内の一部区域でも採取が禁止されています。
海岸入り口に看板が立っている場合などは、注意書きをよく読んでください。
※ この話はフィクションです、というほどフィクションではありません。
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