責任者出て来い!などという趣旨ではまったくありません。
未曾有の事態に、最適な対応が出来なかったとしても、それはやむを得ないことです。
今日5月8日から、新型コロナウイルスの感染症法上の区分が5類に変更され、今回のコロナ騒動にも一区切りが付きました。
ただ、あれは仕方なかった、みんなよく頑張った、というだけで終わってしまうと、万が一、再びウイルスが蔓延したときに、同じような騒ぎを繰り返すことになってしまいます。
当ブログでは、これまで何度も、沖縄県、宮古島市、石垣市、竹富町が独自で行ってきたコロナ対策について記事にしてきました。
そのたびに効果の検証を!と訴えてきたのですが、5類移行で全てが終わりになってしまわぬうちに、改めて訴えたいと思います。
これまで様々なコロナ対策が行われました。それは、国民の税金を原資とし、公権力を背景に行われた訳ですから、十分な合理性がなければならなかったはずです。
具体的には、
その対策は、目的に対し適切なものであったか(比例原則)
その対策は、特定の集団に不利益が偏っていなかったか(平等原則)
その対策は、負担や犠牲を上回る効果があったか(費用対効果)
ということを確認することになるでしょう。
コロナ対策に対しては、常に経済との関係が取りざたされてきました。でも、それだけではなかったはずです。
行政が人の行動を制限する、平たく言えば、国民に我慢を強いた訳ですから、喩え強制力を伴わなくとも、合理的であったかどうかの検証が必要となるのです。
以下、過去記事にも書いたことですが、整理した上でいくつかピックアップして、再度問題提起をさせてもらいます。
観光客対策に偏重していなかったか
感染症ですから、一番最初に沖縄県にウイルスを持ち込んだのは、県外から来た観光客だったかも知れません。しかし、既にウイルスが蔓延した後も、観光客対策に重きを置き過ぎてはいなかったでしょうか。
実際、2021年の第4派では、GWが終わり梅雨に入って観光客が減少した頃に感染が拡大し、第5派では、台風で航空機の欠航があった期間でも感染状況は変わらず、全期間を通じて県内で感染が確認された者の都道府県別内訳は、沖縄県在住者が99%を占めたのです。
(詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)
観光客の来島阻止以外に、他にもっと注力すべき対策はなかったのか、検証していただきたいと思います。
対策は効果的に行われたか
2021年8月、宮古島市は、感染者数が世界最悪になったとして、観光客らに来島の取りやめを求めると共に、突如ビーチの駐車場を閉鎖します。
(詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)
ずいぶん思い切ったことをしたと思いますが、本当にそれでよかったのか、次の観点からの検証をお願いします。
① そもそもビーチ閉鎖は、有効なコロナ対策だったのか。人が海で泳ぐことで感染が拡大する恐れはあったのでしょうか。
② 仮にそうだとしても、観光客が宮古島に着いてからこのことを知ったでは、遅いのでははないか。観光客は、海で泳げなければホテルを一歩も出ない、ということは考えられません。飛行機に乗る前にこのことを周知しなければ、効果は期待できなかったのではないでしょうか。
③ 対策が徹底していませんでした。市有地以外の駐車場は開放されており、路上駐車で海に行く人も数多く見受けられました(路上駐車といっても、宮古島市の道路のほとんどは駐停車禁止ではないので、道路交通法違反ではありません。)。
④ 宮古島の感染状況が世界最悪だとしたら、観光客来るなではなく、島民に島を出るなと真っ先に言うべきだったのではないですか。また、島内に長期滞在する工事関係者や、飲食店関係者に一時帰省を呼びかけることは検討しなかったのでしょうか。
似たようなことが石垣島でもありました。2020年夏から、道路沿いの駐車スペースがある展望所(県管理地だけだったそうです)にロープが張られ、立入りができない状態になっていました。
屋外で、景色を眺める以外の何もすることがない場所です。そこから閉め出しても、観光客が代わりに行く場所は、全てそこ以上に人混みであると思うのですが、そうしたことは考えなかったのでしょうか。
その一方で、2020年夏以降、自分が知る限りでも、夜間営業を続ける飲み屋がありました。宮古島でも、石垣島でも、那覇でも。
行政指導に素直に従わない面倒な相手だったのかも知れませんが、広い海や展望台よりも、狭い場所で酒を飲み盛り上がる方が、誰がどう見たって、何倍も、何十倍も感染の危険性が高いはずです。
そう考えると、やはり県・市が、全体として効果的なコロナ対策を講じたのか、検証する必要がどうしてもあると思います。
行政が法令違反をするのはちょっとまずい
これは、検証というよりも、今後は繰り返して欲しくはない課題です。
石垣市は、2021年7月から、来島する観光客にPCR検査かワクチン接種を求めるとし、「市としては証明書提示は義務との位置付けだ。観光客は全員必ず検査や接種を受けて来島してほしい」と呼び掛けました。
この点について当ブログでは、何度も突っこんでいますが、国民に義務を課すには法律上の根拠が必要で、自治体の長が勝手に義務を課すことはできません。
こんなブラフをかけるより「これは義務ではないが、石垣市は来島者の皆さんを信頼している。」とでも訴えた方が、よほど強く響くと思うのですが。
竹富町もやらかしました。
第一波直後の2020年6月、業種や施設ごとに感染予防対策を盛り込んだガイドラインの作成を求め、作成を条件に協力金の支給を決めたのです。
この中で、少なくとも旅館事業者に対するガイドラインにはちょっと問題がありました。例示された「ガイドラインのイメージ」の中に、こんな項目があったのです。
・ 感染拡大地域等からの客は受け入れない。
旅館業法という法律があって、第5条では、営業者は、空室がある限り希望者の宿泊を拒んではならないとし、例外は、伝染病にかかっていると明らかに認められるときなどに限っています。
つまり、感染拡大地域から来たというだけで宿泊拒否することはできず、違反すると罰則も課せられます。
昨年になって、旅館業法が改正されましたが、それでも、特定感染症の症状がみられる宿泊者に予防に必要な協力を要請し、相手が正当事由なくそれに応じなければ、初めて宿泊を拒否できるということになっただけです。
法律に違反することを行政が事業者に勧め、従えば協力金を払うというのは、いくらコロナだからといっても、ちょっとヤバイでしょう。
法律に違反することを行政が事業者に勧め、従えば協力金を払うというのは、いくらコロナだからといっても、ちょっとヤバイでしょう。
どうしてもやりたければ、町が条例を創って規制すべき話です。
(沖縄ブルーパワープロジェクトHPより)
陰性証明かワクチン接種証明で、施設や飲食店で優待が受けられるというものですが、その証として、観光客にリストバンドをしろというのです。
要は、「私は観光客です。ワクチン打ちました」と一目で分かるようにしておけということです。
これは、個別の法律違反というよりも、人権侵害レベルの問題です。もし、こんなことを人権問題に敏感な欧米でやったら、暴動になるかも知れません。
それを、内閣府と一緒に県が後援したのです。この無神経さはちょっと信じられません。
リストバンドの装着という目に見える形が何故必要だったのでしょうか。カードでも作って、それを提示すれば優待を受けられるシステムでは、目的は達せられなかったのでしょうか。
例えば、街興しイベントか何かで、独身者はバッジを付けろ、そうしたら割引するというようなものです。
もし、住民訴訟で訴えれたら、何と抗弁するつもりだったのでしょうか。
ちなみに、優待が受けられたプロジェクト協力店舗は、全県で283店。宮古島では4件、石垣島で11件で、大半が、ミネラルウォーターとかソフトドリンクサービスというものでした。
2021年9月18日付け琉球新報によれば、前日に開催されたプロジェクト実行委員会において、5802個のリストバンドが配布された旨報告されたそうですが、この時の沖縄県の入域観光客数は、8月だけで28万8千人なので、受け取った人は全体の2%以下ということになります。
コロナで大変だったとしても、人権侵害や法令違反があって良いはずはありません。むしろ、それを先導していくのが行政の役割のはずです。
(沖縄ブルーパワープロジェクトHPより)
緊急事態宣言中、夜間も営業を続けた飲食店に対し東京都が行った時短命令について、裁判所は、憲法が保障する営業の自由の侵害であり違法であるとする一方、担当公務員に過失はなかったとして損害賠償は認めませんでした。
これで良いのだと思います。
未曾有の事態に、各部門の担当者は不眠不休で頑張ってくれました。そのことは、評価されるべきです。
それでも、対策に当たり、重要な点を見過ごしていなかったか、小さな問題点を過大評価していなかったか、配慮すべき点にきちんと配慮したかを、今後のために、客観的な事実の検証を是非共お願いしたいと訴える次第です。
5類への移行で、社会の仕組みとしてはコロナは一段落したことになります。
コロナは消滅はしたわけではないと専門家が注意喚起を繰り返しますが、分かっちゃいるけれど、少し休ませて欲しいというのが本音です。
この間、沖縄旅行に行きたくても行けなかった人も多いと思います。皆さん、本当にお疲れ様でした。
この記事を読んでいただき、趣旨に賛同していただれば幸いです。そして、当ブログのコロナ関連の記事も、これで終わりにできればと思っています。
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