前回の続きになります。りゅうぎんレポートを基に、今回は、ホテル多過ぎの沖縄の課題について、具体的にみていくことにします。
沖縄県内で、ホテルの客室数が、最繁忙期であっても宿泊客数を上回って供給過剰になっている点は、前回記事でご紹介しましたが、それに対してホテル側はどう考えているのでしょうか。
レポートは、ホテルにアンケートを行っており、その回答によれば、経営課題は、稼働率向上、価格競争、人手不足が上位を占め、それに続くものとして、設備の老朽化、物価高が挙げられていました。
これは、当たり前の話であり、供給が需要を上回るわけですから、経済の法則からいっても、競争を強いられるはずです。
聞きたいのは、ホテルを造る前にそれが分からなかったのですかという点ですが、それは措くとして、確かに、従来からやっているホテルにすれば、よそ者がやって来たおかげで、商売あがったりということになるのかも知れません。
でも、既得権があるわけではないので、まあやむを得ないねとしか言いようがないでしょう。
アンケート回答の主な意見の中に、次のようなものがありました。
・OTA(Online Travel Agent:ネット予約専門の旅行会社)を使った支援
・離島への観光誘致策
・宿泊業界に対するある程度の規制
・新規開業のコントロール
・人材採用支援
・既存ホテルへの高付加価値化の支援援助
・求人募集費用の一部負担、採用に向けての支援
・物価・人件費への高騰補助
苦しくなってくると行政を頼る、というのは世の常ですが、それにしても補助だの支援だのと気楽に言ってくれます。
早い話が、儲かると思って始めたら、皆が同じことをやりだして経営が苦しいので、県が金を出してくれ、他の業者には公権力を行使してくれってことですよね。
ホテルランクによる料金の取り決めをしてはどうか、なんていうのもありましたが、もしやったら独占禁止法違反で公取委に捕まります。
そんなこと本当に分からないのでしょうか。
しかしこのことは、裏を返せばホテルサイドも、ホテル増え過ぎ問題を深刻に捉えているということでしょう。
現実問題として、このままではヤバイということを、単に数字上の問題だけではなく、ホテル側も実感しているのではないでしょうか。
(りゅうぎんレポートより)
レポートでは、独自に他の課題を指摘しています。
一つは、無人・非接触型宿泊施設の増加です。
近年、設備の割に価格の安いホテル(コンドミニアム)が増えています。安い理由は、フロントサービスを含めた、居室提供以外のサービスが省略されているからで、要するに人件費を削減しているからです。
沖縄に限りませんが、こうしたホテルでは、チェックインが独自のシステムで行われることが多く、凄く手間がかかることがあります。
無人のフロントでオンライン画面で指示されたとおり操作しても、何度やっても先に進まず、結局電話をかけてホテルの人を呼び出したことも。
その一方、オンラインで決済が済んでいれば、チェックインは省略。部屋(建物)は既に開放されており、鍵は部屋の中に置いてあるといった、簡単だけど、ちょっと不安になるホテルもありました。
ちなみに、チェックアウトは鍵を部屋に置いて出ていくだけ。
フロントに用はないから、却って気楽でいいという人もいますが、何か起こったとに困ります。
自分は、部屋や廊下で騒いでいる、日本語をしゃべらない人達がうるさくて眠れなかった時に、ホテルのフロントに頼んで注意してもたった経験が2~3回あります。
レポートでは、宿泊客の安全確保、質の低下による観光イメージへの悪影響、客側の不適切利用などを問題点に挙げています。
もちろん、食事も付かないわけですから、こういうホテルを使いこなせるのは旅慣れた上級者に限られると個人的には思うのですが、こうした形態のホテルの増加が、沖縄のホテル供給過剰の一翼を担っているわけです。
もう一つは、住居エリアで民泊施設の増加です。
沖縄で多いのは、赤瓦の古民家を改装して一棟貸しするようなタイプでしょうか。
空き家対策ということもあって賞賛されることもありますが、地域によっては、生活空間に観光客がずかずかやって来ることに、住民が嫌悪感を抱くこともあります。
客の方も、ネットで何となく良さげだと思って予約しただけなのに、着いたら色々気を遣わなければならなかった、といった問題も指摘されています。
そこにはいないオーナーだけが一人勝ち、といった状況が、実はあるのです。
レポートでは、先進的な取り組みとして恩納村の例を紹介しています。
恩納村は、那覇から最短1時間程度の距離にあり、万座毛やムーンビーチなど沖縄らしいビーチが広がるエリアとして、古くからリゾートホテルが建設されました。
村は環境保全条例を制定し、地域をリゾート景観創造地区、集落景観保全地区など8つのエリアに分け、土地利用基本計画を定めています。
また、景観条例を制定し、高さ制限などの規制もかけています。
ただ、こうした取り組みを他の地域でも実施して、それが奏功したとしても、何もしないよりはいいでしょうが、これ以上の供給過剰を防ぐことができるだけで、問題解決には手遅れだという現実があります。
また、恩納村でも、民泊による事実上のルール破りが問題になっているそうです。なかなか、難しいですね。
沖縄のホテルは、既に宿泊客に対して供給過剰です。
今後仮に沖縄県の見込みどおり観光客(宿泊客)が増え、かつ、新たなホテルが開業しないとしてもなお、この問題は解消できない見込みなのですから、宿泊客を奪い合う業者間の競争は避けられません。
行政はそのことを前提に、事故、大袈裟な広告、法令違反のサービスの提供などによって、観光客が不当に扱われないよう監視を強めていただきたいと思います。
金をばらまくような旅行支援も結構ですが、本当に取り組んで欲しいことは、自然・景観・文化の保護、公共交通の維持・充実、違法・不当な商売の取締りなど、観光客が沖縄に来たくなるような魅力アップ施策です。
2回に分けて、りゅうぎんレポートをテキストにして、沖縄のホテル増え過ぎ問題を取り上げてきました。
あともう1回、バブルと言われた宮古島を例にとってこの問題を深掘りしてみたいと思いますが、少し時間をかけて分析したいので、次回は別の記事をお届けする予定です。
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