かつて、「海の暴走族」「海のハイウェイスター」「硬派のアンエイ」と異名を取った安栄観光。
石垣市に本社を置き、石垣港と八重山離島を結ぶ船会社です。
「アンエイなら行ってくれる。」という島民の厚い信頼の下、八重山の海を爆走していました。
アンエイは、会社設立時に、船員として島の海人(うみんちゅ=漁師)を集めたそうで、ライバルの船会社、八重山観光フェリー(通称八重観)とは、毎日高速船同士でデッドヒートを繰り広げ、最後はぶっちぎりで勝っちゃうという日常を繰り返して来ました。
その後事情があって大人になったアンエイ。平成22年(2010年)からは、ライバル八重観と共同運航を始め、乗船券も共通になったのです。
牙を抜かれた海のハイウェイスターは、すっかり優等生になり、お友達とも仲良くするようになりました。メデタシメデタシ。
ところが昨年、10年以上続いた蜜月関係が突如破綻し、八重山航路は再び、両社の単独運航となってしまいました。
再び八重山の海で、デッドヒートが繰り広げられるのでしょうか。アンエイに海人魂が復活するのでしょうか。
共通乗船券も廃止になってしまいました。
ある日の石垣港。
9:30、アンエイの「うみかじ号」は、八重観の「サザンコーラル号」と同時刻に竹富島に向け出航します。
2社あるんだから、時間をずらせばいいのに、両社共時刻表は同じです。敢えて勝負を挑むのでしょうか。
職員が爽やかに手を振って見送ってくれますが、こんなことは、昔はありませんでした。「硬派のアンエイ」は何処に行った。
しかも、なんたることか!
途中で八重観のサザンコーラルに併走され、追い抜かれるではないか。かつて、アンエイが八重観に抜かれるなどということがあっただろうか!
11:50、時刻表では両社同じ時間に出発のはずですが、一足先に客扱いを終えたアンエイのうみかじは、乗船客がまだ列をなす八重観のサザンコーラルをおいて、とっとと出港します。
そして、竹富港を離れるや、あっという間に時速53㎞に達します。
海上で時速53㎞というのは結構なスピードです。こんな感じで水しぶきと轟音を轟かせて爆走します。
こうなるともう、アンエイの独断場。
石垣港入港時にはこれだけの大差をつけています。まさに本領発揮。海人魂は健在でした。
サザンコーラルが、遅れて今入港。アンエイの往事の姿は今蘇った・・・かな?
注:この話はノンフィクションです(まあだいたいですが)。
ところで、共同運航を止めても、客が不便になることはあまりなさそうです。
コロナ減便があるので、単純に以前と比べることは困難ですが、基本的には、共同運航をしていた頃と同じ便数をそれぞれ両社で運航するようです。
つまり、キャパが2倍になり、乗客は、どちらかを選んでゆったり乗れることになるわけです。
一方で、共通乗船券が廃止になったことで、往復券を買う場合には、注意が必要です。
それにしても、何でこんなことになってしまったのでしょうか。
共同運航、共通乗船券の導入は、交互に船を出すことでランニングコストを削減し、燃油代の節約につなげるためだったはずですが、燃油高騰の最中、何故今更、と疑問です。
確かに、競争があった方が顧客にとっては利便性が高まります。でもそれは、サービス競争であって、本当の競走では・・・
むしろ、両社の消耗戦にならないことを願うばかりです。
アンエイ、八重観と並び、もう一つあった石垣島の船会社、石垣島ドリーム観光(通称ドリ観)。
3社で競り合っていた時期もありましたが、アンエイ・八重観連合に屈したドリ観は、3年前から定期船運航を休止。ツアー専用で再起を図るものの、コロナ禍でこちらも休業になってしまいました。
アンエイ・八重観連合は、ドリ観潰しという目標を達したので解散したのでしょうか。いや、これは全く根拠のないただの邪推ですが。
安栄観光は、共同運航は諸般の事情で廃止したとサイトで発表したそうです。
※ 安栄観光が大人になっちゃった事情はこちら。
コロナ禍でここ2年ご無沙汰していますが、20年以上西表島に通っています。他社が欠航を決めても、安栄観光だけは朝一便だけとかでも出してくれるありがた〜い会社です。安栄観光大好きです。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除近々記事にしようと思っているのですが、安栄観光もちょっと厳しい状況のようです。