「3年振りに行動制限のない夏」
この言葉がマスコミに踊った今年の夏。3年振りに各地でイベントや行事が再開され、賑わう様子が報道され続けました。
緊急事態宣言もマンボーも出なかった、2022年。宮古島も石垣島も、観光客で溢れましたが、3年前とは変わってしまったことも多かったようです。
今改めて、宮古・八重山のコロナの傷跡を振り返ってみたいと思います。
八重山航路の減便
コロナで一番ダメージを受けたのは、八重山航路、中でも安栄観光でしょう。
安栄観光、八重山観光フェリー共、コロナ前から慢性的な人手不足に見舞われており、対応策として、船舶の大型化が進められて来ました。
安栄観光は、以前は貨客船を除き、全て数十人乗りの小型船でしたが、近年、波照間航路に投入した210人乗りの「ぱいじま2」を始め、150人から200人乗りの中・大型船を全部で5隻を導入しています。
中でも、昨年就航した「いりがじ」は、豪華な船として有名で、「いりかじ」が港に入るのを見たら、八重観ではなく安栄の乗船券を買うという島人もいる程です。
そんな中でのコロナです。第1波の2020年前半、各島航路共1日2便にまで減便。乗客は、石垣島に用事のある島人のみで、観光客はほぼゼロ。
緊急事態宣言解除後、石垣島には観光客が戻っても、八重山の島では受け入れ体制が整わないところも多く、航路の利用者は低調でした。
少ない乗客のために燃費の悪い大型船を稼働させるわけにはいかず、結局は残っている小型船をフル稼働させる羽目に。
大型船は、ポテンシャルを十分発揮できないまま、減価償却費や金利が重くのしかかります。
竹富町からの支援はあったものの、焼け石に水。加えて社内でのゴタゴタを抱えてしまった安栄観光は、船はあっても、運航できない状態となっています。
結局、2022年になっても増便できず、竹富島航路は以前の12往復から7~9往復に、西表島上原航路が9往復から6往復に、黒島航路が4~5往復から3往復になど、大幅減便を強いられ、復活できていません。
同じ境遇ながらも、堅実に事業を進めた八重山観光フェリーにも水を空けられています。
かつて、「安栄なら行ってくれる」と島人から絶大な信頼を受け、観光客にも人気だった安栄観光は、基礎疾患を抱えた人がコロナに感染し、重症化してしまったかのようです。
タクシー不足
これは、笑い話としてしばしば語られるのですが、「島の人は50メートル先でもタクシーに乗ろうか真剣に考える」というのです。
ほぼ全ての人が車を持っている島では、タクシーを気軽に使うものの、実際に乗るのは、飲んだときか自分の車を出すのが面倒なほどの短距離に限られます。
空港や港から乗って、千円、二千円と払ってくれる観光客は、ドライバーにとって有り難い存在でした。
ところが、クルーズ船の客が来るようになって、タクシーはウハウハ状態に。一般の観光客ですら眼中に無しといったタクシーバブルが業界を覆います。
そんな中でのコロナです。第1波の頃は、1日流して売り上げが千円程という日もあったとか。
これは全国共通だそうでうですが、元々タクシー運転手は高齢者が多く、年金をもらいながら、働いて年金の不足分を補う、みたいな感じの人も少なくありません。
東洋経済オンライン(12月11日配信)の石垣島のタクシー運転手へのインタビュー記事によれば、「この島のドライバーは農業・漁業だけで食えない人、定年退職して小遣い稼ぎ目的の人、年金暮らしの人が大半。だから少し余裕があるからギスギスはしてないかな。」
そんなこともあって、コロナ禍を機に退職したり、宅配需要の増大を背景に運送業に転職した運転手も多く、タクシー会社自体が資金繰りに困って減車したこともあって、島からタクシーが減り、2022年になっても回復していないということです。
11月時点で、沖縄県タクシー協会の八重山支部には289台、宮古支部には184台のタクシーが登録されているそうですが、現在、特に石垣島でのタクシー不足が懸念されており、宮古島でも来春の大型ホテルの開業を控え、この先どうなるのか心配です。
レンタカー不足
レンタカー不足の問題は、以前にも当ブログに書きましたが、要するに、コロナで需要が減った → レンタカー会社は車検を迎えた車を売却した → 観光客が戻ったので新車を発注したが、世界的な半導体不足のため予定通り納車されない、ということです。
GW頃から問題が顕在化し、夏になれば少しは状況が改善されるかと思われていましたが、あまり変わらないまま、今年のシーズンを終えました。
宮古島では、夏以降一部の業者が大幅に値上げし、その結果、宮古島では金さえ出せば車が借りられる、といったイヤな状況となりました。
その余波で、従来通りの価格で地道に経営している業者には、業務に支障が出るほど問い合わせが殺到するなど、10月まで騒ぎが続いたそうです。
石垣島や宮古島に行きたくても、レンタカーも借りられず、タクシーも捕まらないから行けないとか、レンタカーがもの凄く高くててもう宮古島には行かない、などという人が出ないように、市や観光協会が対策を講じるべきだと思うのですけどねぇ。
バブル宮古島のホテルラッシュ
バブルと言われた宮古島のホテル建設ラッシュ。コロナ期間中も建築工事は止まらず、ホテルだけは順調に増えました。
その結果、具体的な名前は挙げにくいのですが、最近オープンした大型ホテルは、オンシーズンでも満室にはほど遠い状況だったと聞きました。
別の大型ホテルは、系列ホテルと同程度の設備ながら、他のホテルよりも低価格で勝負をしているようです。
ホテルが増えることは、観光客からすれば、むしろいいことです。予約は取りやすくなるし、結果として競争が激しくなれば、サービスも良くなるでしょう。
ただ、宮古島の新旧ホテルがもしフル稼働するとなると、タクシー不足・レンタカー不足に拍車がかかるだけではなく、飲食店、ビーチや観光地の駐車場など、あらゆるものがも不足します。
要するに、ホテルの客室数だけが増え、一方では、観光に必要なその他の施設・設備、加えてホテルで働く従業員すらも、以前と同じか、むしろ減少している状況なのです。
コロナ前の需要が戻ってもまだ、供給過多という中、来春には、さらに大型のホテルの開業を控えています。
行政の対応は
コロナ禍で残念なことが分かってしまいました。
沖縄県も、石垣市も宮古島市も、観光が主要産業であるにも拘わらず、個々の観光客は大事にしないということです。
行政のコロナ対応については、以前にも散々当ブログで書いてきたので、詳細は控えますが、ハッキリ書かせてもらうと、この2年間、県や両市が行ったことは、観光客をスケープゴートにした「やっている感」の演出だったと思っています。
これはつまり、放っておいても、観光客はやって来るという自信の裏返しでしょう。
確かに、自分も文句を言いつつ、石垣島、宮古島に行き続けている訳ですから、悔しいですが認めざるを得ません。
観光地としても沖縄の魅力は、行政の対応への不満を遙かに上回ります。
とっさのとき、人の本性が現れると言いますが、コロナ騒動の中で、残念ながら、沖縄県、石垣市、宮古島市の本性を垣間見てしまったようです。
これは、自戒も込めて言うのですが、コロナ騒動から学ぶことはもの凄く多かったと思います。この経験を将来に活かすことができれば、行政も、団体も、個人も、今後訪れる新たな脅威にも合理的で適切な行動ができるようになるでしょう。
でも、多分、のど元過ぎれば熱さを忘れます。
自分自身も人のことは言えなさそうですが。
※ レンタカー不足の話は、こちら。
※ 行政のコロナ対応については、こちら。
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